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小鳥の診療室

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小鳥の診療室

2章 鳥を飼うための必需品と食事

日本で小鳥の飼育が一般家庭に広まったのは江戸時代、商人が文鳥や十姉妹を鑑賞用として飼育したのが始まりと言われています。以来、先人がいろいろな方法で飼育や繁殖を行ってきましたが、その中には科学的根拠が薄く、迷信めいたものもあります。飼い主さんは鳥が健康に長生きするために、何が必要で何が不必要かをよく知らなければなりません。


1. ケージ

大きさは最低でも羽を目一杯広げて移動できる位のスペースは必要です。広いに越したことはありませんが、かといっていつも狭い小屋の中にいるのは可哀そうと、小屋の外に出して自由にさせるのは、金属中毒や事故の危険があるので注意が必要です。
小屋から出す時は、必ず目の届く範囲で、また、鳥にとって有害となるものは近づけないようにしましょう。

ケージの大きさの目安(タテ×ヨコ×高さ)としては
文鳥、セキセイインコ; 30×30×50cm
オカメ、ボタンインコ; 60×60×90cm
がいいでしょう。


2. 環境と温度

ケージの置き場所は、日光が入り風通しが良く、温度差の少ない場所を選びます。
また、鳥は木の上で生活するので上から見下ろされるのを嫌います。その為、床から50cm以上の高さに置くと良いです。
温度は20~22℃を維持できれば理想ですが、少しずつの温度変化なら10~30℃でも耐えることができます。もし、病気になってしまったら、人工的に保温が必要です。30℃位が目安ですが、ヒナ鳥や重症の鳥、夏なのに寒がっている鳥の場合は37℃まで必要なこともあります。保温の手段は様々ですが、暑くなりすぎた時に鳥が熱から逃げられるような場所を作ってあげてください。

○ 電気ストーブ
○ ひよこ電球
かごの横から暖めます。
○ ホッカイロ
○ 湯たんぽ
緊急の移動や通院の時に重宝します。
直接鳥に触れないよう、タオルや新聞紙などを敷いたり包んでおくと良いです。ホッカイロを使用する時は換気に注意が必要です。
× 石油ストーブ
× ファンヒーター
× 温風暖房
空気が暖まり易いので早く保温ができますが、暑さの逃げ場がなく十分に換気を行わないと一酸化中毒になる危険があるため、お勧めできません。


3. とまり木

生木(カシ、サクラ、ヤナギなど)を使用するのがベターです。
(有毒なシャクナゲ類や松などの針葉樹は避けましょう。)
これは、インコなどはかじって細くすることでストレス解消にもなり、木の太さに変化がある方が脚力の強化にもなるためです。
太さは、鳥がとまった時に指が円周の2/3位を握っているのがちょうど良いです。

太すぎても、細すぎても握力低下の原因になります。また、とまり木にエサの食べ残しや糞がつきやすく、汚れたままにしていると寄生虫や感染症にかかり易いので、こまめに洗って天日干しにします。


4. 巣

つぼ巣や箱巣などいろいろな形がありますが、オウムやインコ、スズメ目の鳥は普段は必要としません。繁殖期の抱卵の時に必要となりますが、眠る時や休む時には本来使用しません。逆にいつも巣があると、発情を持続させる原因になります。
ただし、ジュウシマツなどは休む場所が必要で巣の中で寝るので、常に入れておきましょう。


5. おもちゃ

現在はいろいろな種類のおもちゃが発売されています。
おもちゃは、ストレスの解消や知能の発育、爪や嘴の伸び過ぎの防止といったメリットがあります。しかし、物によっては誤飲事故やケガの原因となることもあり、発情の対象になったりすることもあります。特に鏡は映っている自分自身に発情してしまうことが多いので、鏡の付いていないおもちゃを選ぶことをお勧めします。おもちゃで遊ぶ時は壊れたり、興味を示さないならすぐに外し、目の届くところで遊ばせるといった配慮を忘れないようにしましょう。


6. エサ

鳥の病気で今でも多いのが栄養疾患です。適切な時期や状態に、適切な食事を与えないために起こることが殆どであり、長期間栄養疾患が続けば生命を脅かすこともあります。
人間がお米やパンだけでは生きていけないように、今も昔も毎日の食事管理が長生きさせる上でとても重要なのです。

1. 成鳥の食餌

主食[殻付きの混合飼料]
通常ヒエ、アワ、キビ、カナリーシードの4種類のイネ科の種子が配合されています。むき餌の状態で売られていることもありますが、殻付きの方が健康に良い食餌と言えます。
種子の殻には糠(ぬか)と胚芽が含まれておりこの中にビタミンBやビタミンEカルシウムとマグネシウムといったミネラルが含まれています。
むき餌は種子を脱穀したものであり、栄養的には炭水化物しか入っていません。
その為、殻付きの方が栄養バランスが良いということになります。
また、殻付きはむき餌よりも鮮度が長持ちし変質しにくいので、胃腸の調子を崩すことが少ないのも利点です。


主食[小鳥用ペレット]
小鳥に必要な各種の栄養素を満たすように作られたペレットタイプのフードが発売されています。現在は海外メーカーからの輸入品を使用していることが多く、年齢や疾患別に製品が分かれているものもあります。ただ、嗜好性が今一つの場合もあり、今後の課題です。

副食;野菜
ビタミンCが豊富なだけでなく、脂肪と結合してビタミンAになるカロチンも含まれています。その為、食べ物の消化を助けたり、脂肪の分解を促進させる効果があります。
但し、あげてもいい野菜とあげてはいけない野菜がありますので、注意が必要です。

あげても良い野菜
小松菜、白菜、春菊、サラダ菜、レタス、チンゲンサイ、ダイコン菜、ニンジン、ブロッコリーなど。

あげたらいけない野菜
ほうれん草、カタバミなどアクの強い青菜、アボガド(重篤な中毒を起こします。)
※あげる時は水を張った菜さしにしっかりさしておき、糞や羽毛などがついたら、こまめに取り換えましょう。

ボレー粉、カトルボーン
ボレー粉は漢字では牡蠣(ボレイ)粉と書き、牡蠣の殻を焼いて細かくしたものです。カトルボーンはイカの甲のことです。いずれも、カルシウムの補給の為に入れておくもので、卵づまりや軟卵の予防に役立ちます。

塩土
種子や実を食べる鳥は筋胃に砂粒(グリット)を貯めて、消化の手助けをしています。塩土はグリットの役割もあり、ミネラル(カルシウム、リン、マグネシウム、マンガン、鉄など)の補給をする役割もあります。
しかし、摂り過ぎるとグリットが多くなりすぎて胃腸の動きが悪くなることがあるため、週に1~2回程度の摂取にしておきます。


2. ヒナ鳥の食餌

成長期であるヒナ鳥の時期に最も必要な栄養はタンパク質です。
この時期に不足すると発育不良や栄養障害が起きやすくなります。
ヒナ鳥の食事として良く使われるのはアワ玉です。アワ玉は殻をむいたアワに卵黄を絡ませて乾燥させたもので、嗜好性も良く市販されていますが、市販のものは実際には殆ど有効な卵成分が入っていないので、ビタミンやミネラルはもちろん、タンパク質ですら十分摂取できません。

したがって、アワ玉のみでヒナ鳥を育てることは栄養バランスの偏りを起こしやすく、かなり危険なのです。
もしも、アワ玉を好んで食べるということであれば、その他に野菜やボレー粉を細かくすり潰したものを同時にあげなければなりません。また、最近ではヒナ鳥の発育期用のペレット、もしくはペーストにできる混合飼料(フォーミュラー)が販売されています。
その中には発育に必要な栄養素がバランスよく含まれているので、それをお湯に溶かして練り餌とし、差し餌する方法が最も優れた食餌です。


7. 水入れ

どの鳥にも飲水用の水は必要ですし、病気になった時には薬を水に溶かして飲ませることが多いので、常に入れておきましょう。
飲水の中に糞やエサの残りが入らないようにし、入った場合はきれいに洗います。また、文鳥はカナリヤや水浴びが好きですので水入れとは別に水浴び用の容器を入れておきましょう。