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小鳥の診療室

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小鳥の診療室

1章 哺乳類とは違う小鳥の体の仕組みについて

1. 羽毛・・・換羽(かんう)

・・・習わしでトヤと呼ばれます。羽が生え換わることです。通常、どの種類の鳥でも毎年1~2回あります。多くは繁殖期が終わった時に始まりますが、季節や温度、栄養などで左右されます。この時期は栄養(タンパク質)要求が多くなり、適切な栄養補給を行わないと免疫力が低下し、感染しやすくなったり、内臓への負担が増加して基礎疾患が起きやすくなります。



2. ろう膜

嘴(くちばし)の根元に膨らんで盛り上がった部分を云います。セキセイインコで特に発達していますが、ハトやオカメインコにも見られます。生後3カ月以降、性ホルモンの影響を受けて色が変化します。通常、オスはピンク~青、メスは白~肌色ですが、発情期を迎えたメスはろう膜の角化が進んで茶色く分厚くなっていきます。やがて発情が終わると剥がれ落ちます。この為、発情が続いているメスはろう膜が膨らみ続けます。オスがメス化する病気(精巣腫瘍)になるとろう膜は茶色くなります。


3. 骨

鳥は空を飛ぶために身体を軽くしなければなりません。鳥の骨質は非常に薄く、骨重量は体重の5%しかありません。(猫は13%です。)他の動物に比べ非常に骨折しやすいので、保定や捕まえる時には細心の注意が必要です。鳥の骨には哺乳類にはない特殊な機能を持っています。


1. 含気骨

幾つかの骨には空気が含まれて(含気)います。これらは気嚢と肺につながり、呼吸器の一部になっています。


2. 骨髄骨

カルシウムの貯蔵庫の役割にもなっています。メスでは卵を作る為に大量のカルシウムが必要なため、産卵の前に骨髄腔内に蓄積する機能を持っています。発情が持続するとカルシウムが沈着しすぎて、飛べなくなったり脚の麻痺がおこったりします。


4. 食道・そ嚢

哺乳類は口から胃まで食道が一直線につながっていますが、鳥類では途中にそ嚢があります。そ嚢は主に食べ物を貯蔵する役割があり、その他にも食べ物を温め、摂取した水分によってふやかす役割もあります。一昔前までは、鳥の病気といえばそ嚢炎と言われましたが、診断技術の向上で真のそ嚢炎はまれであることが解ってきました。


5. 前胃(腺胃)と筋胃(砂嚢)

犬や猫は胃が1つですが、鳥の胃は前胃と筋胃の2つに分かれていて、働きもそれぞれ異なっています。

前胃(腺胃)

細長い形をしており、消化液を分泌したんぱく質を分解します。人、犬、猫の胃に相当します。


筋胃(砂嚢)

前胃の次にあり、発達した分厚い筋肉でできています。焼き鳥のメニューで出てくる砂肝はこの部分です。筋胃の内側は固いヒダ状の膜に覆われて、前胃から送られてきたエサをすり潰すのに役立ちます。また、筋胃の中には飲み込んだ砂粒が残っていてエサのすりつぶしに役立ちます。この砂粒をグリットと呼びます。

鳥が食べ物を吐くことはよくありますが、吐く食べ物のある場所によって吐き方がちがいます。口腔内や食道、そ嚢からエサを吐きだす時は「吐き戻し」と言い、まき散らすことなく1カ所に吐き出す傾向にあります。(求愛行動)これに対して、胃からの吐き戻しを「嘔吐」と言い、吐物をまき散らすのが特徴です。ケージの側面や頭や顔に吐物が付いている場合は病的な「嘔吐」を疑います。


6. 排泄腔(クロアカ)

排泄腔は、消化管と泌尿生殖器がつながっている袋状の管で、糞道、尿生殖道、肛門道の3つからなります。鳥類の排泄物は通常、糞、尿、尿酸が一度に出てきます。これは尿管から出てきた尿と尿酸は一旦糞道へ戻って栄養の再吸収を行った後、糞と混ざり合って肛門道を通って排泄腔から出て行くからです。


7. 肺と気嚢

鳥にも肺はありますが、かなり小さく哺乳類のように膨らんだり、しぼんだりしません。肺の代わりに呼吸運動をしているのが気嚢です。気嚢は気管から発生したとても薄い袋状の組織で、膨らましたり、縮ませたりすることで、ガス交換を行っています。気嚢には血管もなく異物を排除するための機能もありません。そのため気嚢に入った病原体や異物は除去しにくく、また薬も入りにくいため気嚢の病気は治りにくいのです。


8. 腎臓

鳥類の腎臓は、哺乳類に比べて大きく長い左右一対の扁平な形をしています。腎臓の機能は血液から尿を作り出し、水分やイオンの再吸収を行いながら体内に残った不純物を排泄することですが、たんぱく質〈アミノ酸〉を利用した後に出てくるアンモニアは、哺乳類や両生類は尿素として排泄しますが、鳥類と爬虫類は水分を排泄できない固い卵の中で生まれてくるため、固形である尿酸として排泄します。人間で尿酸値が高くなると現れる痛風は、鳥類では主に腎不全で発生することになります。


9. 精巣(睾丸)

精巣は哺乳類と異なり体の外についているのではなく体内にあり、腎臓より頭側、肺のすぐ下にあります。発情期になると非常に大きくなり、ニワトリでは通常の3倍、セキセイではレントゲンにはっきりと映る位に肥大します。

1年中発情し続けているオスは精巣は肥大を続け、やがて腫瘍化しやすくなります。精巣腫瘍の中には女性ホルモンが分泌されるものもあり、外見や行動にメス化が起こります。


10. メスの発情と産卵

現在飼育されている小型のインコ類は、生後6~12ヶ月で性成熟を迎え、産卵できるようになります。(オウム類や大型インコは4~6年かかります。)成熟すると、様々な条件をきっかけにホルモン分泌が促されて発情が起こります。逆に言えば、これらの条件が揃えばいつでも発情しますし、飼育環境によっては長期間発情し続けます。

発情関連因子には次のようなものがあります。

  1. 光周期(日照時間、照明時間)
  2. 発情対象:オスや飼い主、おもちゃや鏡など
  3. 営巣場所:巣箱や巣になりそうな空間
  4. エサ:主にあげ過ぎ、高脂肪、高たんぱく食
  5. 温度:過剰な保温
  6. 湿度:自然環境では雨期による湿度の上昇

通常、産卵は1年に1~2回しか起こらないですが、発情が持続すれば産卵の回数も増え、卵塞をはじめとする様々な繁殖関連疾患の原因になります。多くの種類で排卵(卵巣から卵子が1つ出されること)から産卵まで約24時間です。これ以上は「卵塞」ということになります。


11. 体温

人間の体温は約36~37℃ですが、鳥の体温は40~42℃と非常に高体温です。これは静止状態から直ぐに飛び立つために高いエネルギーが必要だからです。これだけ体温が高いので、病気での発熱というのは殆どありません。逆に病気になると、体温の維持の方が大変なため保温が必要になるのです。では、暑くなったり寒くなったりすると鳥はどうやって体温調節するかというと、

暑い時

  • 羽を寝かせる(縮羽)
  • 翼を広げて、脇を冷やそうとする。
  • 浅速呼吸(パンティング)
    ハッハッハッというような細かく速い呼吸。気嚢や肺から熱を放出するために行います。
  • 血管を拡張させる。


寒い時

  • 羽を膨らませる(膨羽)
  • 震える
    体を震わせることで熱を作ろうとします。
  • 血管を収縮させる。

といった行動をとります。このような様子を見かけたらすぐに室温の調節を行いましょう。