うさぎを診察するにあたって
ウサギは本来大変臆病な動物で、来院して、診察や処置を受けるウサギの緊張と、ストレスはとても高いものです。とくに、初めて診察を受ける場合や、久しぶりの診察の場合も同様です。ご自宅での暮らしの中で、幼い頃から複数の人に撫でられたり抱かれることに慣れている場合は、比較的診察することを許容してくれますが、ご自宅でも、抱かれることを嫌がったり、人と一緒にいる時間が少なく、昼間は1羽で過ごしている等のウサギは、診察を極端に拒みます。具体的には、キャリーから出した時や、診察台に乗せた時などに、突然大暴れします。健康診断や、爪切りだけなどの元気なウサギの時ほどこのような事態が起こりやすくなります。この時に最も警戒すべきことは、骨折です。ウサギの骨は、とても脆くできていて、それに比べて大腿筋などの筋肉は強靭です。(この身体の構造は、自然界で捕食される立場であるため、一瞬にして逃げる必要性から備わった仕組みなのです。)緊張の糸が切れると、最大の瞬発力を使ってその場から逃げようとします。この時の筋肉の強さに骨の強度は敵いません。その結果、一瞬にして骨が折れてしまうことがあります。骨折しやすい場所は、腰椎、大腿骨、下腿骨などの後半身です。腰椎骨折が起きると、殆どが折れた場所からの脊髄麻痺がおこります。その結果、後肢の麻痺、排尿障害、QOLの低下等がみられ、予後は不良と言わざるをえません。後肢の骨折でも、外部固定や外科手術による内固定を行いますが、神経質なウサギは術後管理がかなり困難です。
診察するにあたって、家で抱かれるのを嫌がる、神経質、極度の怖がりあるいは怒りっぽい等のウサギの特徴を必ずお話してください。状況を見ながら判断しますが、場合によっては診察を見合わせることを御了解ください。それでも診察、処置をご希望の時は、一瞬の事故を100%予防はできないことをご理解ください。