アレルギー疾患の治療ガイド
『お薬を飲ませている間はいいけど、終わるとまた痒がってしまう』というのは、アレルギー体質のペットを飼っていらっしゃる方の共通の悩みです。『もう、治らないの?』というご質問もよく聞きます。体質を治すことは難しいですが、症状を軽くして、生活上気にならないようコントロールしてあげることが、アレルギー治療の目標となります。一つだけでなく色々な方法をご紹介する中で、その方法があなたの大事な家族に最良なのかを選ぶ指標にしていただければ幸いです。どんな症状がでるの?
1頭1頭、症状が酷く出る所は様々ですが、共通している所もあります。痒みの出る場所 | 眼・口の周囲、耳、足の裏、肛門の周囲、尾の付け根、腹部、腰部など |
呼吸器への影響 | 鼻水、クシャミ、咳 |
消化器への影響 | 嘔吐、下痢 |
アレルギーの原因は?
ノミアレルギー | ノミの唾液 |
食物アレルギー | 牛乳、卵、肉類、大豆、トウモロコシ、小麦粉、ピーナッツなど |
接触性アレルギー | シャンプー、ノミ取り首輪、プラスチック製食器、羊毛など |
吸引性アレルギー | ハウスダスト(室内塵の中のダニ) 花粉(樹木、イネ科、ヨモギ、オオバコなど) ストレージマイト(貯蔵食物の中のダニ) カビなど |
診断方法は?
原因物質の検索 | 成育歴、病歴、季節性、環境因子、治療歴 |
悪化因子の検索 | 寄生虫(ノミ、ダニ)の検索 真菌、マラセリア(酵母菌)の検索 細菌の検索 |
治療方法は?
薬物治療(痒み、炎症、感染を抑える)
ステロイド剤
副腎皮質ホルモン剤で、アレルギー症状を抑えるための第一選択薬。コントロール時は、出来るだけ少量にし、1日置きで使用していく。
薬への感受性が個々で違うため、定期的な副作用のチェックが必要。
抗ヒスタミン剤
ステロイド剤に比べ鎮痒効果は低く、動物での効果はあまり期待できない。コントロール時や、痒みでイライラする時の鎮痒効果で使用。
漢方薬
体質に合うものが見つかると、体質改善にも役立ちステロイド剤を使用しなくてもよい。1日3回、空腹時に投薬し、1回の投薬量が多い。
体質に合ってるかどうかの見極めに長時間の服用が必要。
抗生物質・抗真菌剤
アレルギー体質があると、皮膚のバリアが弱く、ブドウ球菌や真菌が繁殖しやすいので、膿皮性や二次感染の防止の為に投薬が必要。免疫抑制剤
体の免疫反応を抑えることで、過剰反応であるアレルギー症状を抑える。肝臓の障害などでステロイドの使用が難しい場合や、ステロイドの使用に不安がある場合に使用する。
効果に多少時間がかかる点と費用が高価である点がデメリットとなる。
オクラシチニブ
アレルギー性皮膚炎による痒みを軽減させる、新しいタイプの薬。副作用が少なく、しかもステロイドと同等の効果と即効性が期待できる。
シャンプー療法(アレルギー用のシャンプー剤を使用)
皮膚のバリアを作る保湿成分を含む、低刺激性のシャンプー剤を使用して、感染の原因となるフケを落とし、皮膚の清浄化を保つ。皮膚の状況によって、2週間に1回くらいのシャンプーが効果的。食餌療法(低アレルギー食、アレルゲン除去食、低分子タンパク食)
4~12週間、処方食を与え、掻痒、消化器症状の軽減がみられた場合、アトピー性皮膚炎ではなく食物アレルギーが確定される。但し、アトピーと他のアレルギー(食物、接触性、ノミ)を共有していることも多い。時間の経過とともに共有していく可能性も高くなるので、何らかのアレルギーが疑われた場合は、処方食を継続して、更にアレルゲンを増やさないようにする。
自宅でのアレルゲン回避と管理方法
ハウスダストマイト
非浸透性のカバー(ビニール)でマットレス、枕、ベッド、椅子、ソファーを覆うほこりが積もるのを防ぎ、隅々まで掃除がしやすいように、ペットが眠る場所からぬいぐるみなどのほこりがつきやすいものを除去する。クローゼット、洗濯室、ベッドの下など、トク に誇りが積もりやすい場所にペットを入れない。
HEPAフィルターのついた掃除機で頻繁に掃除する。
掃除中とその後1時間はペットを外に出しておく。
換気の悪い場所では。可能な限りカーペットやラグを取り去る。
ペットに使用する寝具などは、毎週55℃以上のお湯で洗う。
除湿機、エアコン、加湿器を使って室内の湿度を50%くらいに調整する。
カビ
刈り取った庭の草葉や庭木、納屋からペットを遠ざける。ペットの寝場所は乾燥させて、清潔を保つ。
浴室、洗濯室、クローゼットなど湿度が上がりやすいところには近付けない。
フードは、密封容器に保管し、酸化や湿気に注意する。
カビが発生した場所は防カビ剤、希釈ハイター液で掃除する。