症例： チンチラ（グレー） メス、 8歳 645g チロ
チロちゃんはメスのチンチラです。
慣つっこい性格で、診察も手に乗せて診ることができます。
3年前に元気食欲がなくなり、検査の結果子宮に液体が貯留している
事が判り、手術をお勧めしましたが踏みきれず、
定期的な内科治療で緩和してきました。
今日になり状態が急変し、横になったまま動かなくなりました。
顔に浮腫が出ています。
触診で、子宮内の液体の量が増加し、
レントゲン検査では、他の臓器を圧迫するほどの子宮腫大所見が
確認されました。
腹腔の循環障害が起こっているようでした。
飼主さんのKさんには
「手術のリスクは高いが、このまま内科的治療を続けても
いずれ死にいたるので、救命するには摘出手術の選択しかないと思う。」
と伝えました。
Kさんは
「何もしないことの後悔はしたくないので、手術をお願いします。」
と決心してくれました。
直ぐに酸素室で酸素吸入を開始し、
術前に皮下輸液と利尿剤を投与しました。
そして、
手術はその日の午後実施しました。
イソフルレン吸入麻酔で
導入し、維持しました。
薄くなった腹壁を開けると、
液体を貯留し巨大化した子宮が
飛び出してきました。
チロは体力はなく、
かなり弱っています。
時間との勝負でした。
切除部分を素早く、確実に結紮していきます。
子宮を卵巣と共に取り除くことが
できました。
腹壁を縫合し、手術は終了しました。
幸いに殆ど出血はありませんでした。
術後のチロちゃんの様子です。
良く、頑張ってくれました。
巨大な子宮を摘出したお腹が、
ぺちゃんこになっているのが
判ると思います。
手術は無事終わりましたが、術後は、かなり心配でした。
手術前621gあった体重が、
術後410gになっていました。
子宮の重さが211gだったわけです。
これは本来の体重の半分が子宮水腫だったということです。
しかし、チロの生命力は負けませんでした。
翌日から少量の牧草を食べ始め、日毎に回復していきました。
そして、現在は520gになり、
元気一杯に遊ぶようになっています。
手術はかなり冒険的なものでしたが、
改めて、生命力の強さを感じた症例でした。
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