今日もまた、夏の忙しい一日が終わろうとしている夜7:00頃、

初診のビーグルのMIX犬を抱えた男性が飛び込んできました。

 

そのワンコを見ると、

左顔面がひどく腫れています。

そして、上唇に2か所、咬まれたような傷があり

そこから血様液が垂れていました。

 

これは・・・

「マムシに咬まれたな!」 と直感しました。

 

「状況を説明してください。」

飼主のKさんにお尋ねしました。

 

マムシ咬傷1.jpg

 

「夕方、いつものように散歩に裏の谷津山に

出かけたんだよ。

リードを付けていたんだけれど

急に草むらに飛び込んだんだ。

そしたら、 キャン!!って、悲鳴にちかい

鳴き方をして飛び出してきたよ。

そのうち、顔がだんだんと腫れてきたので

その足で、病院まで駆け込んできたんだ。

おそらく,ヘビに咬まれたと思うんだけどね。」

 

Kさんの予想通り、

このシチュエーションは

「マムシ咬症」の典型的パターンです。

 

以下はニホンマムシ解説サイトです。

http://homepage3.nifty.com/japrep/snake/kusarihebi/text/japmamusi.htm

 

マムシの咬傷
催吐×、胃洗浄×、活性炭×、解毒剤○
人間はまむしに咬まれて命を落とすことが多いですが、犬がまむしで死に至ることは少ないです。
ヒアルロニダーゼ、ホスホリパーゼA、低ポリペプチド(心毒性、神経毒性)などの化学物質が体内にはいることにより症状が起こります。
まむしの毒は出血毒、溶血毒です。低血圧、局所浮腫、斑状出血、疼痛、電解質異常、抗凝血、凝血(肝・腎不全)などを起こします。
咬傷1~2時間で皮下出血、腫脹、浮腫を呈し、その後壊死、潰瘍となることもあります。重症ではショック状態も報告されていますが犬は毒に比較的抵抗性があります。
傷口から毒を吸飲できる場合は切開・吸飲処置をして、まず安静を保ちます。その後は傷口の壊死などに注意しながら、ステロイド、抗ヒスタミン薬を使用します。

 

受傷したワンコのララは、

顔を触ろうとすると、

悲鳴をあげて、抵抗しました。

相当、咬まれた傷が痛いんだろうと

思います。

 

犬は人間より、

マムシの咬傷(マムシ中毒)に強いと云われています。

経験でも、すぐに治療すると、殆どが治ります。

ただ、経験した症例の中で、

咬傷後、病院にかからず治療せずにいたら、重い腎不全になってしまった

ケースもありました。

 

その理由から、早期治療は重要と考えています。

 

ララには、

受傷後、2日間は静脈ルート点滴をしました。

抗生物質、肝臓保護剤、ビタミン剤を点滴に加えました。

鎮痛剤として、オピオイドを使用しました。

また、ステロイド、セファランチンも投与しました。

 

マムシ咬傷2.jpg

 

この写真は

受傷後、2日目のものです。

初日より、腫れは拡がりました。

けれど、この時点で食欲は旺盛で、

痛みもだいぶ軽減したようでした。

 

飼主の希望もあり、

抗生物質の内服を指示して

3日目に退院しましたが、

顔の腫れも5日~7日かけて改善していくと思います。

 

抗毒素血清は、乾燥まむしウマ抗毒素血清がありますが

犬で、アナフィラキシー、過敏反応等が高率に報告されていて、

当院では使用していません。

むしろ、マムシの口腔内や毒素中のクロストリジウムやブドウ球菌等の細菌の

感染をしっかりケアすることが大切と考えています。

 

マムシは7月~9月に繁殖期を迎え、

山林や、田畑に出没しますから、

里山での散歩は充分注意しましょう。