1歳と若いにも拘らず、不正咬合があるウサギが
下顎がぽっこり晴れてきたという主訴で来院しました。
症例: ウサギ(ロップイヤー) メス 1歳 BW2.35kg キチ
診察すると、右下顎臼歯の歯根から発生した膿瘍でした。
下顎骨膜に固着していますが、可動性があり、膿瘍毎摘出できそうです。
そこで、飼い主のTさんと相談し、摘出手術をすることにしました。
鎮静剤で前処置後、
麻酔BOXで導入します。
良好な麻酔状態になったところで
フェイスマスクに切り替えて
イソフルレン麻酔で維持します。
下顎の毛を刈ると
球形に腫大した膿瘍が確認できます。
滅菌ドレープで覆いました。
皮膚を切開します。
膿瘍の壁を破らないように
周囲組織を鈍性に、あるいは鋭性に
剥離していきます。
下顎の骨膜に達したところで
骨膜を剥がしながら
膿瘍全部を摘出します。
膿瘍を破ることなく
摘出することができました。
摘出後の様子です。
下顎の骨膜を削った跡が
洞穴のように見えます。
皮膚をナイロン糸で縫合して
手術は終わりました。
このように、膿瘍を破ることなく摘出できれば
術後は良好で
再発することもほぼありません。
ウサギは、犬、猫のように
膿瘍を破って排膿させ、消毒することで
治れば良いのですが、
この方法では、多くは完治せず、直ぐに
再膿瘍化します。
今回のように、膿瘍そのものを
摘出することが、根治の道です。
キチちゃんもその後、
すっかり元気を取り戻し、
再発は起こっていません。
捨てうさぎなので確かな年齢が分からないのですが、わが家に来て3年経ちますので、4,5歳以上の高齢うさぎと思いますが、その子も今年の5月に膿瘍の腫れを見つけて切開しました。
2か月後には再発して、また切開して排膿に通いましたが、切開した穴の奥の方から膿が出てくるとのことで、そこをもう一度切開して今は膿は止まって食欲も旺盛で元気にしています。
原因不明のくしゃみが治らないのが心配ですが、こちらは抗生剤を飲ませて少し落ち着いてきています。
ところで、膿瘍ごと取れる場合とそうでない場合の違いとはなんでしょうか?
うちのうさぎは下あごに膿瘍ができ、最初のは結構ぽっこりと腫れていました。この症例と出来てる場所も似ていてうちのうさぎもこのように取れなかったのかと思いました。
やはりうさぎ専門の獣医じゃないと難しい処置なんでしょうね。。。