昨日、座っていた場所に出血の跡があったという主訴で

メスのウサギが来院しました。

 

症例: ウサギ(ライオンドワーフ)  メス  3歳5ヶ月齢  BW 1.3kg  デイジー

 

触診すると、腹部に柔軟性のある腫瘤臓器が触知されました。

そこで、レントゲンとエコーで確認をしました。

 

 

 

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レントゲンでは、小腸、盲腸を頭側に変位させる

ソーセージ様の大きなマス陰影が確認されました。

 このマスは、腹部の位置から腫大した子宮と思われました。

 

 

 

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 腫大した子宮の内容を知るために

エコー検査を実施しました。

内容は、液体を示唆して、

水腫、膿瘍などが考えられました。

この結果を飼い主のFさんに説明し、

相談の結果、

開腹し、摘出手術を行うこととしました。

 

 

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 ドロレプタン、ケタラール、ホリゾンで前処置後、

イソフルレン吸入麻酔で導入、維持しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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手術部を滅菌有窓布で

覆いました。

 

 

 

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皮膚を丁寧に切皮し、

腹壁を慎重に切開しました。

 

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腹腔内の脾臓と子宮が

見えます。 

 

 

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 腫大した子宮を

腹腔外に露出しました。

レントゲンで確認されたマスは

この液体を含んだ子宮です。

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 卵巣の堤靭帯の前後を結紮し、

その間を切断します。

 

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左右の卵巣堤靭帯を切り離し 

子宮体を露出します。

 

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 子宮体も切断前後を結紮します。

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 子宮体を切り離します。

 

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腫大した 子宮を卵巣と共に

摘出できました。

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 腹壁は連続かがり縫合で閉鎖しました。

 

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皮膚はマットレス縫合と、単純結紮縫合を併用

しました。 

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手術後のデイジーです。

まだ覚醒はしていません。

 

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 摘出した子宮の

全容です。

 

 

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液体内容を確認すると

白濁した膿汁でした。

 

この子宮を病理組織検査しました。

 

 

 診断: 可能性子宮内膜炎(子宮蓄膿症)

 所見: 子宮―片側子宮角は内腔に膿汁を多量に貯留して著しく拡張しており、

      同部子宮壁は菲薄化する。子宮内膜には偽好酸球やリンパ球などの

      炎症細胞がび慢性に浸潤する。

      もう一方の子宮角ではうっ血・水腫および子宮内膜の過形成性増生が

      認められる。また、同側卵管においては、蓄膿を呈する。

      卵巣―左右とも著変は認められない。

 

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覚醒後、入院室に戻った直後の

デイジーの様子です。

 

ウサギは子宮疾患が比較的多く発生し、

出血を伴う子宮内膜症、子宮の腫瘍(子宮腺癌、平滑筋肉腫など)

子宮水腫などが後発します。

 

犬ほど子宮蓄膿症は多くありませんが、

今回のように、細菌が関与すると、蓄膿症も

起こることが判っています。

出血や、膿汁の排出が見られないと

発見が遅れがちになるので、

お腹を日頃から触る習慣をつけておくべきでしょう。

 

 

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この写真は

退院する時の

デイジーです。

食欲もあり、すっかり元気になっています。 

  

この後、

抜糸時にも経過は良好で

問題なく、完治しました。