症例: ドワーフウサギ  6歳  オス BW2.2kg  レオン

 

主訴: 2ヶ月前から左眼からの涙が多く、少し充血している。

 

診察すると、左眼がやや突出しています。

眼脂、流涙、結膜充血も見られました。

このようなケースの場合、単純な結膜炎(乾草の粉、ほこり等の刺激や細菌感染)ばかりでなく

歯科疾患(歯根の細菌感染)、呼吸器疾患、他の眼科疾患から二次的に生じる場合もあります。

そこで、頭部のレントゲンを撮りました。

   

  

 

 

 

 

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ウサギが6歳にもなると、

多かれ少なかれ、歯の異常は

見られます。レオンの臼歯も全体的に

透過性が低下し、歯根部の吸収像が

ありました。

この場合、慢性的な歯根の細菌感染が

疑われました。

 

 

そこで、しばらく、

抗生物質の点眼と

レボフロキサシン、塩化リゾチームの内服で

改善できるか、経過を観察することにしました。

 

3ヶ月治療を続け、

結膜炎、流涙、眼脂、は改善がありましたが

軽度の眼の突出は変わりません。

そして、眼の背尾側(目尻)が膨らんできました。

 

 

そこで、エコー検査を実施しました。

 

 

 

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眼背尾側の膨らみにプローブをあてると

液体貯留画像(黒く扇形に写っている)が

見られました。

 

診断として、

眼窩液体貯留疾患(眼窩膿瘍、眼窩漿液腫)が

考えられました。 

 

このままでは、いずれ眼球突出が

重度になる可能性があり、

オーナーと相談の結果、

切開し、排膿(排液)後、

ドレーン留置を実施することとしました。

 

 

 

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麻酔状態に入ったところです。

毛を刈ってある部分が膨瘤してきている

場所です。

 

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眼球への圧迫により

眼球尾側(2時~4時)の結膜が浮腫を

起こしています。

 

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切開部周囲を消毒後、

有窓ドレープをかけました。

 

 

   

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写真では判りにくいのですが

切開部から排出したのは

ウサギ特有のチーズ様膿汁ではなく

一部膿を混じた漿液でした。

 

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排液をした後、

希釈したオババン液と

ゲンタマイシン希釈液で

眼窩膿胞内を洗浄しました。 

 

 

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最後に眼窩膿胞内にドレーンを挿入し

ナイロン糸で3針縫合し、留置しました。

 

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手術が終わり、

麻酔の覚醒を待つ

レオンの様子です。

 

 

手術翌日、退院しました。

瞬膜が一時腫れて露出しましたが

日毎に腫れは引いて、3日目には

元に戻りました。

排液と消毒洗浄を2日毎に行い

腫れも見られず、

排液も出なくなった8日目にドレーンを抜きました。

 

 

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8日目にドレーンを抜去し、

10日目の検診時のレオンです。

眼の突出も改善し、

穏やかな顔付きになっています。

眼窩膿瘍は、

一般的には重度になることが多く、

眼球が突出してしまうと

眼を救うことができず、失明したり

眼球を摘出せざるを得ないことも

まれではありません。

 

今回は、膿汁が漿液性であったことが

幸いして予後が良好だったと思います。

しかし、中、長期的に続けて観察、検診していくことが

大切なことは言うまでもありません。