日曜日の午前中、お母さんとお嬢さんが

小さなハムスターを住みなれている飼育ケージに入れて

来院しました。

症例: ジャンガリアン・ハムスター 2歳6カ月齢 BW42.4g クッキー

 

「2日前から、陰部から出血があります。食欲は少し減った気がします。」

 

ケージの床に敷き詰めた、シュレッダーで細かくした紙の中に隠れていたジャンハムを

診察の為に包むように持ってみると、

あきらかにお腹が膨れています。

触診で、お腹に大きな腫瘤が触れました。

 

 

「お腹に相当大きな固まりがありますよ。

出血は、それが原因しているかもしれません。レントゲンとエコーをしましょう。」

飼主の同意を得て、

検査を実施しました。

 

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食事をする2Fのプラスティックフロアーに

血のりが引きずるように付着していました。

 

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レントゲン所見では、

腸管を左側に変位させる大きなマス(塊)

が腹部右側に確認されました。

 

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このマスの内容はエコー検査で、

低エコー所見として確認され

液体の貯留が疑われました。

 

仮診断:

 出血を伴う巨大な卵巣あるいは子宮の腫瘤疾患

 

飼主との相談:

 腫瘤が出血の原因として考えられので、

この腫瘤を外科的に取り除かなければ、時間の経過とともに

衰弱して、亡くなる可能性は否定できない。

しかし、小さな体なので、この大きな腫瘤を開腹して摘出する

リスクは小さいものではない。

それを踏まえて、選択してほしいことを伝えました。

 

飼主のKさんは 外科手術を選択しました。

 

出血が続くことから、

手術は緊急的にその日に実施しました。

 

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手術1時間前に乳酸リンゲル液2.5cc投与し、

麻酔BOXによりイソフルレン麻酔で導入しました。

 

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麻酔状態に入ったところで

マスク維持にに切り替えました。

手術部位を短時間で、毛刈り、剃毛を

しました。

 

 

 

 

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本来は、滅菌ドレープで被うところですが

呼吸状態と心拍を

継続して確認する目的で

あえて、何もかけずに手術を実施しました。

皮膚と腹壁を切開し、

腫瘤を露出しようとしましたが

大きすぎて、腹腔から出ないので

穿刺して血様液を抜いて、腫瘤の容積を

減らしています。

 

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腫瘤は巨大化した卵巣でした。

左右の卵巣血管と子宮頸管部の3か所を結紮し、

卵巣腫瘤と子宮を摘出しました。

 

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腹壁を縫合しています。

 

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腹壁と皮膚を縫合し

手術は終了しました。

クッキーは強い生命力で

手術に耐えてくれました。

術後に再度、皮下輸液と

抗生剤を投与しました。

 

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摘出された卵巣腫瘤と、

子宮です。

注射ポンプには吸い出した卵巣内容液

が入っています。

左側の正常に近い卵巣との

違いが判ります。

 

 

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クッキーは手術後、ICUで

一日入院しました。

写真は、次の日の縫合部位です。

 

 

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クッキーは術後3時間ほどしてから、

シード食とチンゲン菜を食べ始めました。

写真は翌日のクッキーです。

顔色もよく、

順調な回復を見せました。 

 

卵巣腫瘤は病理検査のため、

検査センターに提出しました。

 

現在、検査中ですが、

結果は判明したら、報告いたします。