「犬に玉ねぎやネギを食べさせてはいけないよ!」

は、多くの犬好きの人達には知られていることです。

これは、生であっても調理した中に入っていても、相当量の玉ねぎを口にしてしまえば

中毒を起こす可能性が高くなります。

 

玉ねぎに含まれる「アリルプロピルジスルフィド」が

酸化によるハインツ小体貧血(赤血球を溶血させる)を引き起こす物質として働くのです。

 

最近の当院での症例をご紹介しましょう。

 

 

症例: M・ダックス 4歳 避妊メス BW2.85kg  リン

 

主訴: 今朝から、おしっこが少し赤かった。

     夕方、帰宅すると、ワインレッド色のおしっこをした。

      そのあと、嘔吐もあった。

 

ここ数日の様子を詳しく聞くと、

昨日、おばあちゃんの部屋に入っていったので

そこで、何か食べたかもしれない、とのことでした。

昨日のおばあちゃんの夕食は?

と聞くと、

「豚肉と玉ねぎの生姜焼きです。」

ということでした。

 

診察中、診察台で排尿をしました。

それが次の写真です。

 

りん1.jpg

 

 

ワインレッドというより、

赤味がかったブドウ色です。

これは、出血尿ではなく、溶血尿(ヘモグロビン尿)です。

 

りん2.jpg

 

血尿では、遠心分離すると血液と、尿が

きれいに分離します。

溶血尿はご覧のように

2000回転で5分間遠心しても

全く分離しません。

 

そこで、血液検査をしました。

 

HCT: 54.4%  WBC: 13200

GOT:154 GPT:27  T-Bil: 1.3 ↑  T-Plo:8.1 Alb:3.6

BUN:11 Cre:0.8 

 

T-Bilの正常値は0.3以下ですので、1.3は溶血性黄疸が起こっていました。   

玉ねぎ中毒の特異的解毒治療はありません。

対症治療、支持療法が治療の柱になります。

りんちゃんは入院になり、

点滴、強肝剤、副腎皮質H剤、ビタミン剤等の治療を数日実施しました。

 

りん3.jpg

 

2日後の尿は写真で比較していますが

普通の淡黄色に改善しました。

 

りんもすっかり回復し、

元気に退院しました。

 

 

今回のケースのように、

玉ねぎ中毒はうっかりすると、起こってしまいます。

多くは、回復していきますが、

隠れた基礎疾患が潜んでいたりすると、(心臓病、肝臓病、腎臓病など)

深刻な状態に悪化する可能性も否定できません。

 

くれぐれもご用心の程。