当院では、ウサギの診療数が年々増加し、

ウサギを診ない日はまずないような状況になっています。

その中で、最近の症例での子宮疾患の2例を紹介します。

 

症例1: ロップイヤー  メス  6歳8カ月齢  BW1.7kg  チャッピー

 

症例2: ドワーフ  メス  3歳   BW1.25kg  エコ

 

 

症例1: チャッピーは1ヶ月前にツメダニによる背中の脱毛で、来院しました。

      セラメクチンで治療を開始し、脱毛は改善してきましたが、再診時の

      触診で、下腹部に子宮と思われる柔らかい腫瘤を確認したので、レントゲンを撮りました。

 

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外観上では、一見してお腹が膨れている

ようには感じません。

レントゲン上では、膀胱の頭側領域が不鮮明になり、

盲腸、腸管を頭背側に変位させているようです。

 

再度、触診により柔らかい腫瘤以外に、やや硬めなドングリ大程たの

腫瘤も確認されました。

 

エコー検査では、やや粘調度がある液体が貯留した子宮が

確認されました。

 

血液検査では、HCT30.1%と軽度貧血を示しましたが

他は正常範囲でした。

 

飼主の希望により3日目に摘出手術を実施しました。

 

 

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すでに、麻酔が導入されて、

点滴チューブもも留置されました。

 

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皮膚を切開します。

 

 

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腹壁を切開すると、

内臓が見えてきます。

盲腸、小腸が見えます。

 

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液体が貯留し、

腫大した子宮を腹腔から

露出しました。

 

 

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腫大した子宮の全容です。

推測より、大きいものでした。

 

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型通りの結紮切断により

切除が完了しました。

 

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腹壁、皮膚を縫合し、

手術は無事終了しました。

 

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病理組織学的診断:

  子宮腺癌

 

  両側子宮の腫瘤状部分に、

子宮内膜腺由来の悪性腫瘍性病変

(子宮癌)の浸潤性増生が認められました。

内膜からの隆起状部分から固有筋層に

浸潤している部分も見られますが、

子宮外膜には達していません。

なお、両側卵巣には、著変は認められません。

 

術後: チャッピーは順調に回復し、3日目に退院となりました。

 

 

 

症例2: エコちゃんは、猛暑の8月中旬、初めて血尿がありました。

      診察とレントゲン検査の結果、子宮疾患が疑われたので、手術を勧めました。

     迷っているうちに時は過ぎ、

     9月末に再び血尿が再発した為、

     手術に踏み切りました。

 

 

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手術前に撮影したレントゲンです。

側面像で、膀胱の背側に子宮陰影が見られます。

 

 

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麻酔が入り、

手術の準備ができました。

 

 

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有窓ドレープで切開部を被います。

 

 

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腹壁を切開し、露出した子宮です。

左側子宮角に血腫がありました。

 

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左右の卵巣を結紮切断し、

反転した子宮の全貌です。

 

 

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子宮摘出して、

定法通り閉腹しました。

 

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手術直後のエコちゃんです。

覚醒するまでは、酸素吸入をします。

 

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子宮腫大部分は

やはり血液の貯留でした。

ここが原因で血尿を起こしていたのです。

 

 

病理検査結果:   子宮内膜出血

          子宮内膜は全体的に過形成性に肥厚し、また随所に出血する。拡大した子宮腔の一部には、大型の血液凝塊(血腫)が形成される。腫瘍性変化などは示さない。

卵管周囲組織は著明なうっ血・水腫を呈する。

 

予後:

 3日目に退院。食欲、元気とも健康時にもどる。

 

同じ、子宮疾患でも、

腫瘍性変化があるとないでは、予後に大きな違いがあります。

症例1のチャッピーは、1ヶ月後の検診で

転移性と思われる肺腫瘍が見つかりました。

ウサギの子宮疾患はこのように、要注意です。

早期発見、早期治療が肝要です。