1週間前から、腹部がすごく膨れてきたという主訴で

フェレットが来院しました。

来院途中で、呼吸も荒くなっていました。

 

症例: フェレット 避妊メス 3歳3ヶ月齢  BW 1.04kg  バニラ

     BCS 2.5

 

腹部は重度に膨満していますが、痩せていました。

触診では、腹部に巨大な腫瘤が認められました。

血液検査、レントゲン検査、エコー検査を行いました。

 

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腹部が異常に膨らんでいます。

触ると硬い腫瘤に触れることができました。

 

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レントゲンでは腹部の内容が不鮮明で、腫瘤の他に腹水も貯留しているようでした。

 

血液検査所見:

 HCT 36.1% WBC 7500 

 PLT 6.1×10000 

 Glu 54 GOT 227 GPT 121

 BUN 54 Cre 0.6 

 TP 4.5 Alb 2.0

 

エコー検査:

 辺縁の不整な混合エコーレベルの腫瘤

 

仮診断:

 腫瘍化した脾臓?

 リンパ節腫大を伴った消化管腫瘍

 腸間膜リンパ節腫大(リンパ腫)

 

プラン:

腫瘤の正体を明らかにするため、

手術のリスク等を含めオーナーと相談をし、

翌日、開腹手術を実施しました。

 

 

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バニラに麻酔がかけられました。

気管チューブを挿菅し、

術中点滴チューブとモニターコードが付けられています。

 

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有窓ドレープをかけたところです。

 

 

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腹壁を切開すると、

腫瘤の顔が見えてきました。

 

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腫瘤は小腸を巻き込み、

強固に癒着して

1つの固まりを形成していました。

 

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膵臓が見えます。

腸間膜リンパ節が重度に腫大して、

境界がよく判らなくなっています。

 

 

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脾臓の腫大も疑っていましたが、

脾臓はこの腫瘤には巻き込まれていませんでした。 

 

 

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腸間膜リンパ節が腫大し小腸を巻き込んでの腫瘤は

摘出は不可能で、

癒着した大網の一部を病理検査の目的で

切除しました。

 

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腫瘤を全摘出できないまま

閉腹しましたが、

病理検査の結果を待って、

リンパ系の腫瘍ならば

抗がん剤治療の選択肢が残っています。

 

 

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閉腹直後のバニラです。

 

 

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病理組織学的診断:

 悪性リンパ腫

  検索した組織全体に及んで

  小型腫瘍細胞が特定の配列をとらずにび慢性単調に増殖しています。

  リンパ芽球様の細胞からなる腫瘍細胞は、

  核小体明瞭・クロマチン豊富、大小不同が見られて異型が目立つ円形不整形核と

  狭い細胞質を有していて核分裂像が多数認められます。

 

 

抗がん剤の投与:

 開腹手術の翌日、

 食欲が出てきたので、第1回目の抗がん剤CCNU(ロムスチン)を投与しました。

 4日目、明らかな腹囲の減少と腫瘤の縮小が見られました。

 

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来院時の腹囲と比べて、明らかに小さくなっています。

 

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レントゲンでも腫瘤の縮小が

あきらかに判ります。 

 

 

 

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   更に10日目には

腫瘤が外側からでは判らないほど

小さくなっていました。

バニラは日毎に回復し、

食欲旺盛、動きも極めて活発になりました。

(寛解期に入る)

 

14日目には抜糸を終了し、

3週間目(21日目)に2回目のCCNU投与を行いました。

この投与前の

血液検査所見です。

 

HCT 37.5% WBC 4400

PLT 69.5×10000

Glu 119 GOT 47 GPT 187

BUN 37 Cre 0.9

TP 6.6 Alb 3.2

 

CCNUの副作用の骨髄抑制の指標であるWBC2000を

下回ることもなく、

他のデータも良好です。

何より一般状態が極めて良好なことです。

 

現在、4回目のCCNU投与が終了して

リンパ腫の再燃は起きていません。

 

著効と言えるこの抗がん剤の治療効果

は、多中心型や胸腺型のリンパ腫にも期待大です。

機会があればぜひ試みたいと思っています。