人懐っこく誰にでもフレンドリーな可愛いヨークシャーテリアのアコメちゃんが
左眼がしょぼしょぼするということで、来院しました。
症例: ヨークシャーテリア 避妊メス 8歳 BW2.15kg アコメ
眼を注意深く検診すると
何か動いています。
白い1㎝程の長さの糸ミミズのような虫が
くねくねと涙のたまった結膜の中を
泳いでいます。
この虫が寄生した犬を診るのは、二度目の経験です。
これは「東洋眼虫」です。
虫は数匹はいます。
そのまま、摘んで取り出そうとしましたが、
瞬膜の下側に入ってしまい、
アコメちゃんも時間がかかると嫌がるようになりました。
そこで、軽く吸入麻酔をかけて、取り出すことにしました。
写真はその時のものです。
こんなに長い虫が眼の中に何匹も寄生していました。
この日、見つかって摘出したのは3匹でした。
ところが、翌日の検診で更に3匹、
翌々日の検診でももう2匹見つかり、取り出しました。
さて、この東洋眼虫はどのようにして、眼の中に寄生するのでしょう。
この犯人はマダラショウジョウバエです。
このハエが動物(犬、猫)の眼にとまった時、
ハエの口器から感染幼虫が眼の中に脱出するのです。
この幼虫は眼の涙液の中で1㎝程の成虫になります。
メスの成虫は涙液中に幼虫形成卵を産み、
すぐ孵化した幼虫は、再びショウジョウバエに吸引されるのを
待つのです。
このライフサイクルが左図です。
アコメちゃんは谷津山にお散歩によく行きますが、
その時に感染があったのでしょう。
症状は比較的軽度ですが、
流涙、眼脂、結膜炎、角膜炎、眼瞼炎などがみられます。
直接、取り除くことが治療になります。
あわせて、イベルメクチンなどの抗線虫剤の投与です。
以前は
山間部に限局した寄生虫だと思っていましたが
住宅地にもこうして見られることが
判りました。
今後も犬、猫の結膜炎には要注意でしょう。
山田動物病院
院長殿
北海道江別市の酪農学園大学獣医学部で寄生虫病学を担当いたしている福本です。最近関東以北での東洋眼虫症例を複数手がけております。
インターネットを見たら開業の先生や飼い主の方のホームページやブログからかなり東洋眼虫症があるようです。
国内の分布や発生状況等(何月頃)他の都道府県からの移動や旅行等、そしてミジかにメマトイの存在がわかっていたかを知りたいです。
お忙しいところ申し訳ございませんが先生の開業されている病院の所在地やこの犬の情報等をお教えいただきたいのですが。
個人情報等につきましては配慮いたすとともに国内での人獣共通伝染病の一種が人の病院ではなく動物病院の獣医師の力で発見したり情報が蓄積されることで獣医学の高権威つながると思います。
最近一部のメール等寝ご対応いただき長野県、岐阜県からの先生方等から新たな感染を教えていただきました。
現在新潟、さいたま、宮城県の症例について投稿中であり9月の獣医学学会(於 帯広畜代)でも発表させていただきます。埼玉県ではかなり濃厚な感染があり、担当の開業の先生のお名前でMVM誌の最新号に掲載予定です。
よろしくご配慮いただけますようお願いいたします
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福本 真一郎
酪農学園大学獣医学部
感染病理教育群 獣医寄生虫学教育ユニット
獣医寄生虫学教室
〒069-8501江別市文京台緑町582-1
電話011-388-4747 ファックス011-387-5890
E-mail:fukumoto@rakuno.ac.jp
福本真一郎様
メール拝見しました。
当院の所在地は 静岡市葵区沓谷3-7-3です。
当院の南側は谷津山という標高100m程の小さな山があり、
ハイキングコースが整備されいて、昆虫類も多く生息しています。
東洋眼虫については今までに2例確認しています。
H17年5月19日
ジャックラッセル 2歳4カ月 メス BW 5.3kg
静岡市葵区松富在住
市内を流れる安倍川の河川敷によく散歩する。
H22年5月11日
ヨ-クシャーテリア 8歳2カ月 メス BW 2.2kg
当院の隣家の飼育犬
よく谷津山に散歩に行く。
以上です。
御研究の参考になれば幸いです。