M・ダックスのロイドちゃんが深夜、お父さんの膝に乗ろうとして

突然、悲鳴を発して、後足が動かなくなりました。

早朝に近所の病院で鎮痛処置をしてもらい、その日の午前中当院に来院しました。

 

症例: ミニチュア・ダックス  7歳10ヶ月 オス BW 5.1kg  ロイド

 

歩行検査では、後肢を引きずって歩き、起立不能でした。

前肢及び脳神経検査は正常でした。

肢の神経学的検査では

固有位置感覚、踏み直り反応は左右とも→ 0(反応なし)

膝蓋腱反射、屈曲反射、会陰反射は→ 2(正常)

深部痛覚→0~1(消失~低下)

 

血液検査:  HCT 60.4%↑ WBC 23100↑ CPK1125 ↑ の上昇が見られ

その他の項目は正常範囲でした。

 

 

 

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レントゲン検査では

椎間板のT13~L1がやや狭く感じられましたが

病変部位の確定には至りませんでした。

 

診断: 胸腰椎椎間板ヘルニアグレード4

 

まずは入院、ケージレストとし、

外科手術を前提にMRI検査について、オーナーと協議しました。

 

数日後、オーナーの同意が得られたので

キャミック静岡にてMRI検査を実施しました。

 

 

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横断像及び冠状断像で、T13-L1椎間で腹側及び右腹側より重度の

脊髄圧迫所見が認められました。

この病変は同椎間より尾側方向に向けて見られ、

同椎間よりL1椎体尾側端レベルまでの範囲で

脊髄圧迫が確認されました。

 

 

MRI検査の結果

内科的治療では回復が難しいことが

予想されたため

オーナーの同意を得て、外科手術を実施しました。

 

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手術前のロイドの様子です。

点滴チューブがつながれています。

 

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手術部位のマーキングとして第2腰椎棘突起にピンを刺しておきます。

 

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滅菌ドレープで術部周囲を被います。

 

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皮膚を切開すると背側の脂肪層が見えてきました。

 

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皮下織及び脂肪を分離し、腰背筋膜を露出します。

正中線のすぐ外側を棘突起に沿うようにして

メスでこの筋膜を切開し、

骨ノミあるいはメスのミネを使って筋肉を棘突起より

剥離していきます。

 

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多裂筋の線維束を切断した後、

筋肉を更に分離して関節突起を露出します。

 

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病変となっている椎間板前後の椎体も関節突起に付着している筋肉を切り離します。

 

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ロンジュールで関節突起を切除します。

 

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切除した関節突起の下側に露出された外側板の海綿質を

高速電動ドリルで削っていきます。

この操作は少し時間がかかりますが

慎重に進めていきます。

写真は削った外側板を示しています。

 

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ケリソン骨パンチを使って外側板に開いた窓を広げていきます。

 

 

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中央に白く見えるのが脊髄です。

 

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脊髄の腹側に飛び出した椎間物質を

慎重に専用のスケラーまたはピンセットで取り除いて

います。

 

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椎間物質を掻き出した後は

脂肪組織を脊髄の上に乗せておき

クッションにします。

 

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剥離した筋肉を縫合します。

 

 

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皮膚も縫合して手術は終了しました。

 

 

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3日後から、低周波とレーザーによる治療を開始しました。

まだ、歩行はできませんが

深部痛覚は戻ってきました。

 

10 日目に退院しましたが、

その後も3~4日毎に検診と低周波、レーザー治療を続けています。

 

飼主のKさんには

後足のマッサージや屈伸運動、

歩行訓練などのリハビリも始めてもらっています。

 

 

 

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手術後3週間が経過し、

後足で起立できるようになりました。

まだ、交互に前に出すことはできませんが

足の裏で立って身体を支えています。

重傷だったこともあり、時間はかかっていますが

少しづつ回復を見せています。

 

この病気は飼主と医療従事者が協力し合って

リハビリを積極的に行うことがとても大切なのです。