軟便を主訴にウサギが来院しました。
食欲、元気はあるとのことでしたが、身体一般検査で腹部膨満と
腹腔内に腫瘤が認められました。
症例: ウサギ(ロップイヤー) メス 5歳 BW2.6kg プリン
そこで、
レントゲン検査を実施しました。
腹腔内が膨大し、陰影は不鮮明で、腹水貯留が示唆されます。
腹腔内の左右に石灰像が見られ、石灰化を伴った腫瘤の存在が
疑われます。
血液検査所見: HCT 32.9%↓ WBC 11800 PLT 77.3×10000
Glu 128 BUN 22 Cre 1.4 GPT 10 T-Bil 0.2
軽度貧血以外は、正常レベル
臨床的評価で、悪性の腹腔内腫瘍も疑われるため
飼主のTさんと相談し、
開腹手術を実施し、可能であれば摘出することにしました。
鎮静処置後、イソフルレン麻酔で導入維持しました。
術中は静脈点滴で循環、血圧を維持しました。
毛刈り、剃毛後、手術部を消毒し、
ドレープをかけます。
腹壁を開けると、
腹水が多量に貯留していたので
やや血液を混じた腹水をシリンジで抜いています。
腫瘤の一部が露出されました。
子宮のようです。
子宮、卵巣の全貌が見えました。
巨大化した腫瘤は左右の卵巣の位置に存在していました。
これだけの巨大化した腫瘤の為、
周囲臓器との強固な癒着が心配されましたが
幸いにも癒着は強いものではなく
腫瘤形成された子宮と両卵巣を摘出することができました。
摘出後は、
大量の生理食塩水で腹腔内を洗浄しました。
サクションチューブで洗浄液を吸引しています。
洗浄後は、型通り腹壁、皮膚を縫合し、
手術は無事終了です。
手術直後のまだ覚醒していないプリンちゃんです。
腹水は300cc貯留していました。
片側の卵巣付近の腫瘤の長径は7cm程あります。
摘出された子宮と卵巣の全貌です。
309gありました。
腹水300ccなので、体重2.6kgのうち、600gが取り除かれました。
随分重かったと思います。
この腫瘤は病理組織検査をすることにしました。
プリンは強い生命力を持っていて
術後の経過は順調で、手術後数時間で野菜と牧草を食べ始めました。
翌日からも良好な推移で回復、治癒しました。
最初の1枚目の写真は退院後3日目の検診時のものです。
お腹が軽くなったせいか、動きが格段に軽快になったとのことでした。
この腫瘤の正体は何だったのでしょう?
病理組織検査の結果です。
診断: 子宮腺癌及び平滑筋肉腫
腺癌 ×20
子宮内膜間質に腺癌の浸潤性増殖が認められます。
腺癌 ×400
核小体明瞭でクロマチン豊富な
卵円形異型核を有し、核分裂像が散見される
癌細胞は、不規則な中小の腺腔を密に形成して
浸潤性に増生しています。
平滑筋肉腫 ×20
固有筋層内に、多結節状腫瘤が形成されています。
この3月にウサギの子宮腫瘍が続きました。
子宮疾患については、
前のブログにも避妊手術との関係を記載しています。
ウサギは子宮疾患の発生率がとても高い動物です。
避妊手術を受けていないメスが10歳を超えて長生きしている例はとても珍しく
4歳以上になると発病率はきわめて高くなります。
ウサギのメスは野生では本来、年に4~6回も妊娠します。
それだけ短期間隔で卵胞ホルモンと黄体ホルモンががバランス良く働いています。
ところが、妊娠機会の殆どない家庭飼育ウサギは、常に発情している
状態が続き、
この不自然なホルモンバランスが悪影響を及ぼし、子宮の病気が多発する
と考えられています。
子宮疾患と避妊手術
について、
以下のサイトが詳細に説明しています。参考にしてください。
http://www.h4.dion.ne.jp/~hirorudo/tetyou/t09/hi_p1.html
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