食欲減退したウサギが来院しました。

レントゲン撮影で、石灰沈着を伴う子宮腫大所見が確認されました。

 

症例: ドワーフウサギ メス 5歳 BW2.38kg    あきこ

血液検査では軽度貧血(PCV34.0%)の他は正常範囲でした。

 

子宮腫瘍が考えられることから、オーナーと相談し、開腹手術による精査をすることにしました。

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側面像の後腹部に

中央に石灰化を伴う球状の腫瘤が確認されます。

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背腹像でも第5,6腰椎の右側、膀胱より頭側に石灰沈着が見られるマス所見が

確認されました。

 

 

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前処置にドロレプタン、ケタラール、ホリゾン、アトロピンを使用し、

イソフルレンの麻酔BOXで導入しました。

 

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ウサギのメスはのどに肉垂があり、あきこちゃんは特にたっぷりと付いているので

麻酔中は気管を圧迫しないように吊り上げておきます。

 

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切開部位の周囲をドレープで被います。

 

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薄い腹壁を切開し、腹腔を開けました。

直下に盲腸が見えますが、その左側に充血腫大した子宮の一部が見えています。

 

 

 

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卵巣間膜にある動静脈を結紮し、子宮を露出します。

 

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子宮の全貌が露出できました。

子宮頸部よりやや尾側の膣を結紮し、子宮を摘出します。

 

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摘出した子宮です。

ピントがずれていて見ずらいですが、

矢印部分が腫瘤でその他の子宮組織も内膜症の外観をしています。

 

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腹壁、皮膚の縫合をして、終了です。

 

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終了直後のあきこちゃんです。

まだ、覚醒はしていないですね。

 

その後は順調に回復して、数時間後には野菜を食べ始めました。

合併症もなく、食欲元気もほぼ元に戻り、3日後に退院しました。 

 

 

病理組織診断:  平滑筋肉腫、及び 子宮内膜増殖症

 

 両側子宮角部の腫瘤状部分に、子宮平滑筋由来で局所浸潤性の強い悪性の腫瘍性病変である平滑筋肉腫が認められました。

また、子宮内膜には増殖性変化(内膜腺は過形成を示し、ポリープ状や大小の嚢胞状の腺組織形成)が認められました。

 

ウサギは子宮疾患の発生率がとても高い動物です。

避妊手術を受けていないメスが10歳を超えて長生きしている例はとても珍しく

4歳以上になると発病率はきわめて高くなります

 

ウサギのメスは野生では本来、年に4~6回も妊娠します。

それだけ短期間隔で卵胞ホルモンと黄体ホルモンががバランス良く働いています。

ところが、妊娠機会の殆どない家庭飼育ウサギは、常に発情している

状態が続き、

この不自然なホルモンバランスが悪影響を及ぼし、子宮の病気が多発する

と考えられています。

子宮疾患と避妊手術

について、

以下のサイトが詳細に説明しています。参考にしてください。

http://www.h4.dion.ne.jp/~hirorudo/tetyou/t09/hi_p1.html