ここ1ヶ月の間に、中毒の可能性のある家庭用品と食品を食べてしまった2頭のM・ダックスが来院しました。

 

症例1: M・ダックス 3歳10ヶ月 去勢オス BW5.8kg  ノムノム

    30分前に防虫剤(ミセスロイド)1個をかじって中身を食べてしまった。

      ミセスロイド・・・引き出し・衣装ケース用防虫剤

 

症例2: M・ダックス 3歳  オス  BW6.4kg  チョコ

   10分前にガーナミルクチョコレート1枚(60g)、ホワイトチョコレート2枚を 丸々食べてしまった。

治療: 2症例とも吐かせる目的で以下のように治療し、事なきを得ました。

     来院直後、Nacl(食塩)を大さじ1杯飲ませました。

     5分後、トラネキサム酸を急速静脈注射しました。

     更に5分後、Naclを大さじ1杯飲ませました。・・・・・胃内容を吐き出す。

 

その後も問題なく、翌日の検診でも異常はありませんでした。 

 

 

 

 

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胃内容を吐いた直後のノムノム。

 

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食べた物を 「なんで吐かせるの?」

と不満そうな顔。 

 

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犬や猫が出合ってしまう中毒物質は本当にたくさんあります。

それらを全部数えあげれば1冊の本になります。

 

中毒の危険性を疑う時、その物質の成分と摂取量が問題となります。

防虫剤ミセスロイドの1個当たりの主成分はプロフルトリン50mg未満、クエン酸トリエチル50mg未満です。それぞれのLD50(50%致死量)は2000mg/kg以上、8000mg/kg以上なので、大量に摂取しなければ中毒にはならないことが判りました。

それでも、胃炎の引き金になることもあるので、オーナーを安心させる意味でも吐かせることは有益でしょう。

 

 

 

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チョコレート中毒

 

今回、チョコちゃんが食べてしまったチョコレート量が中毒量に達するか気になるところです。

(犬はチョコレートを何個食べれば中毒になるか?)

 

チョコレートに含まれるテオブロミンは精神をリラックスさせ、集中力を高める効果がありますが、一方で犬に中毒を起こさせることが知られています。

人はこのテオブロミンを効率的に排除できますが、犬はテオブロミンの半減期が長く(17.5時間)、体内から素早く排除できないことが問題なのです。

犬のテオブロミン中毒量は記載されている用量に差はありますが、

平均すると100~200mg/kg(LD50:240~500mg/kg)です。

チョコレートに含まれるカカオ成分が多いほどテオブロミン含有量も多くなります。

 

 

市販されているチョコレートに含有されているテオブロミン量を以下に示します。

ミルクチョコレート         154mg/100g

セミスイートチョコレート     528mg/100g

ベーキングチョコレート     1365mg/100g

ミルクチョコレート(ゴディバ)   177mg/100g

ダークチョコレート(ゴディバ)  559mg/100g

  

一般的には「小型犬が通常の板チョコ1枚(50g前後)を丸ごと食べると

問題がでる可能性が高い。」と覚えておくと良いでしょう。

 

ちなみに、ホワイトチョコレートはテオブロミンの含有量がわずかなので、極端に心配する

必要はありません。

 

チョコちゃんはミルクチョコレートを一枚(60g)食べてしまったので、問題を起こす可能性は

ありました。

早期に気付き、吐かせる治療をすぐ行ったことは適切な処置と思われました。