10ヶ月齢のパピヨン犬が昨夜、ベットから飛び降りてキャンと鳴いて、
それから、足を挙げています、と来院しました。
症例: パピヨン 10ヶ月齢 メス BW2.8kg ラム
触診、及び跛行診断で、右後肢膝蓋骨脱臼グレードⅡ~Ⅲと診断し、
レントゲン検査を行いました。
レントゲン検査でも、右膝蓋骨内方脱臼が確認されました。
初診であったこともあり、まずは消炎鎮痛剤による内科治療を選択しました。
1週間後、9日後に鳴きながら後肢を挙上する症状が続いたため、
相談の結果、整復の為の外科手術を実施することとしました。
麻酔導入後、
手術する右後肢の毛刈り、消毒を行いました。
滅菌ドレープで手術部の周囲を被いました。
皮膚の切開を行います。
膝蓋靭帯が見えてきました。
膝蓋靭帯の外側を切開し、靭帯を内側に牽引すれば、
滑車溝が確認されました。
滑車溝は正常に比べ、浅いことが判ります。
滑車溝を垂直方向で見たところです。
内方脱臼がある多くの症例で、このくぼみ(溝)が浅くなっています。
この滑車溝を深くするためドリルで削っていきます。
膝蓋骨の収まりが良くなるように深さを調節します。
垂直方向で見たところです。
深く削れています。
膝蓋靭帯の脛骨付着部(脛骨結節)に骨ノミを入れ、
脛骨結節を外側に移動させます。(脛骨結節転移)
靭帯を切断しないよう慎重に剥離をすすめます。
十分に移動(転移)ができたところで
元の位置に戻らないように、ここに「クサビ」としてスクリューピンを2本打ち込みます。
膝蓋骨を滑車溝に戻し、移動した脛骨結節の位置を確認し、
ピンが2本打ち込まれました。
外側から見たところです。
内側から見たところです。
余分なピンは「クサビ」になる最短の長さで切断しました。
切開した膝蓋部の外側関節包を縫縮します。
(内側に外れないよう外側への引っ張り力を強めるため。)
外側関節包縫縮術が完了しました。
内側の関節包は縫合せず、緊張させずに自然に閉鎖することになります。
皮下織は型通り縫合します。
皮膚も縫合し、手術は完了しました。
手術後
入院室のケージ越しからラムちゃんを撮影。
E‐カラーをして、しばらくは安静にしてもらいます。
術後のレントゲン所見です。
膝蓋骨が正常な位置に整復されています。
この後、跛行はなくなり、順調な経過をたどっています。
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