4日前から吐いていて、今日は食欲、元気が無くなったという主訴で
フレンチ・ブルドックが来院しました。
症例: フレンチ・ブルドック 去勢オス 3歳3ヶ月齢 BW11kg コリキ
主訴: 4日前から毎日数回吐いている。食欲は徐々に減退し、今日は何も食べない。
便量は少なく、2日前から少量の軟便になっている。
心当たりはないが、何かかじったかも?
血液検査所見: 白血球の上昇(22500)の他は著変なし。
レントゲン検査:
胃は拡張し、液体とガスの貯留が見られる。
小腸内にも内腔を拡張させるガスが存在し、胃腸機能の低下、あるいは通過障害が疑われる。
そこで、その日のうちに造影検査を行いました。
30分経過しても、胃から造影剤が流れ出ていきません。
この後も経時的にレントゲン撮影をしました。
5時間後の所見です。
普通なら結腸まで造影剤が流れますが、小腸の途中で流れが止まっていました。
この所見から、通過障害(腸閉塞)と診断し、
飼主のHさんと相談し、翌日、原因追究の為の開腹手術を実施しました。
術前より脱水を改善する目的で点滴を行いました。
麻酔はアトロピン、ドロレプタン、べトルファールで前処置をして、
ケタラールで導入、イソフルレン吸入麻酔で維持しました。
麻酔が施され、尿道カテーテルも留置されました。
腹部の毛刈りと剃毛も行いました。
切開部分を開けてドレープが被われました。
皮膚と皮下織を切開しています。
腹腔内から閉塞が起こった部位の小腸(回腸)を露出させました。
何が入っているのか?
触った感じでは硬いものではなく、布? タオル地?
回腸を切開し取り出したものは、ぬいぐるみの足とかシッポのような丸い毛糸素材のものでした。
取り出した後は他の部分にも閉塞物がないか消化管全域を確認してから
切開部の縫合です。
吸収性の縫合糸(PDSⅡ)で漏れがないよう2重に縫合しました。
腸閉塞の手術では
術後の腹膜炎や癒着の予防のために
腹腔内を十分に洗浄することが重要です。
洗浄後は型通り腹壁を縫合していきます。
皮膚も縫合し、手術は終了です。
これが腸閉塞を起こした犯人でした。
毛糸製の小さなボンボンのようでした。
飼主のHさんに見せたところ、思い当たらないようでした。
やはり、ぬいぐるみのどこかをかじって飲み込んだのでしょうか?
コリキはその後順調に回復し、5日後にはすっかり威張りん坊のコリキに戻って
退院しました。
その後、この犯人の正体が判明しました。
1年前、スリッパの頭に付いている飾りのボンボンが無くなったことを、
お嬢さんが覚えていたのです。
とすると、1年間このボンボンは胃の中にあり、最近になって腸に流れ出した
ということになります。
動物の異物摂取による腸閉塞にルールはないんだなと
改めて勉強になった症例でした。