モルモットのお尻から腸?が飛び出してきて出血している!!

飼い主のSさんがあわてて来院しました。

キャリーの敷物は点々と血が付いています。

お尻を確認すると、血が付着した親指大の腫瘤が陰部から飛び出ていました。

 

症例: モルモット メス 3歳9カ月 BW811g  メープル

 

 

 

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写真のようにザクロが割れたようなグロテスクな腫瘤がお尻から飛び出ています。

メスのモルモットの肛門と陰部はすぐ近くにあってどちらから脱出してるのか一見するだけでは判りません。

確認により陰部 からと判りました。

出血量は少なくありません。

小さなモルモットのことです。

このまま出血が続けば、時間の経過とともに命に関わります。

 

飼い主のSさんに緊急的な切除手術が必要なことを説明し、同意していただきました。

 

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麻酔はイソフルレンで導入、維持しました。

脱出した腫瘤は親指大程あるのですが、探索すると陰部の付着部は小さいことが判りました。

 

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肛門、陰部周囲を消毒し、

腫瘤をできるだけ外側へ引っ張り出すと、陰部から発生した腫瘤根部が露出できたので

4-0針付ナイロン糸で2重に結紮しました。

 

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結紮後、腫瘤部を外科鋏で切断すると、結紮部は膣内にス~と引っ込みました。

 

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術後直後のまだ覚醒前のメープルです。

この後は順調に覚醒回復し、食事もその日のうちに採食し、

術後も極めて良好に経過しました。

 

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さて、この腫瘤の正体は何だったのでしょう?

 

病理組織学的診断:     過形成性ポリープ(Hyperplastic polyp)

   膣前底腺と間質性結合織が主体のポリープが認められました。

   非腫瘍性の増殖性病変で、悪性所見はありません。

   表層は広範囲にびらんが形成され、びらん直下の間質には、毛細血管が豊富な線維芽細胞の   増勢生と、膣前底腺の反応性増生が認められています。 

   構成する細胞にはいずれも異型性はありません。

 

悪性でなかったことは幸いでした。

しかし、例え良性あっても出血が続けば虚脱し出血死がありえるので、

飼い主の同意が得られ迅速に切除を実施できたことが、メープルの救命につながりました。