地震の影響その2として

ちょっと、前のブログにも載せましたが、猫の尿道閉塞が夏のこの時期としては例年に比べ多かったことです。しかも、地震の後の8月後半から集中しました。

http://www.yamada-ah.com/blog/2009/09/82.html

おそらく、地震の恐怖、不安、トラウマから排尿習慣に変調をきたし、

潜在していた膀胱疾患が顕在化し発症率が高まったのではないでしょうか?

 

この日(9月4日)も、

2日前から食欲元気廃絶し、ぐったりして動かないという理由で、猫が来院しました。

触診でテニスボール大に拡張した膀胱を確認しました。

症例: 日本猫 オス 1歳6か月 BW 5.4kg  クロ

 血液検査所見:

 HCT 52.1% WBC 22500  PLT 78000

 Glu 185 T-Cho 185 T-Plo 7.2 Alb 3.6 GOT 10> GPT 24

 BUN 185↑↑  Cre 18.9↑↑

 Na 131  K 8.2  CL 119

 

重度の高窒素血症とK値の上昇が見られました。

K値はかなり危険な値です。

 

心電図所見:

 

FUS3.jpg  

 

心電図では、P波が確認できません。

また、QRS幅が延長していて、ノッチがみられます。

心房の動きがかなり弱っているのです。

これは、重度の高K血症の所見です。

このまま、治療せずにいれば、心房停止から心室性頻脈、そして心停止へと向かいます。

 

 

FUS1.jpg

 

この状況では、尿道閉塞解除の為に麻酔は危険です。

幸いに、膀胱を圧迫したことで尿道閉塞が解除され、少しづつ、尿がペニスよりで始めました。

ただ、膀胱が長時間拡張した為に膀胱麻痺がおこっています。

そこで、これも無麻酔下で、尿道カテーテルを留置しました。

 

点滴はK(カリウム)が入っていない生理食塩液を静脈ルートで入れています。

 

 

 

 

FUS4.jpg

 

排尿が促され、点滴を続けるとクロが動き出しました。

点滴の継続の為に枠をかけています。

 

クロはこの後、順調に経過し、

2日後にはBUN 29  Cre 1.4  K  3.5

と正常値に戻りました。 

3日後カテーテル除去、4日目に退院しました。

 

当院ばかりでなく、他の地域、他の動物病院でも同様な地震の影響があったのではないでしょうか?

きたる東海地震(絶対あってほしくないですが)に向けてちょっとしたシュミレーションになったようです。