半は暑かった8月、

猫の尿道閉塞あるいは排尿異常を主訴に来院した症例が

例年より多かったようです。

その中で、2症例について紹介します。

 

症例①

雑種猫 4歳 オス  BW5.7kg  メイ

主訴: 昨日から排尿困難 、今日はぐったりしている

現症: パンパンに拡張した膀胱を触知。

診断: 尿道閉塞症

 

症例②

日本猫 8歳 去勢オス BW4.0kg  タイガ

主訴: 1ヶ月前に血尿で来院、レントゲン検査で膀胱結石を確認

     摘出手術を希望

症例①

 

主訴と現症から、緊急疾患と判断し、

血液検査、麻酔下での膀胱穿刺、尿道閉塞解除 を実施しました。

 

血液検査では BUN 49  Cre 3.7 と尿毒症は軽度でした。

膀胱穿刺で50cc排尿後

尿道カテーテル水圧法で閉塞解除を何度か試みましたが、

閉塞は取れません。

そこで、超音波金属カテーテルでのプラグ粉砕法を行うことで

閉塞が解除できました。

解除後は尿道カテーテルを10.5㎝で留置し、皮下点滴、止血剤、抗生剤等の治療後

入院としました。

翌日、尿道カテーテル内の閉塞が起こりました。

膀胱内の閉塞物質の確認のためエコー検査を行いました。

 

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膀胱内には大小様々な沈殿物が確認されました。

エコー画像からは砂状結石と剥離組織片が混じり合った塊状物と思われました。

 

この所見から

飼い主のNさんには、

膀胱切開による塊状物除去を提案し、了解を得ました。

 

 

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入院2日後に膀胱切開手術を実施しました。

 

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麻酔は前処置後、気管チューブを挿管し、イソフルレン吸入麻酔で維持しました。

 

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膀胱直上にドレープの穴をあてがいます。

 

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皮膚、皮下織、腹壁の順に切開を行い、膀胱を露出します。

膀胱は炎症の為、奬膜面に充出血が見られます。

 

 

 

 

 

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膀胱を電気メスにて切開します。

 

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膀胱内に産生された塊状物を取り出します。

 

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多量の塊状物が取り出されました。

顕微鏡で組織構成を調べたところ、砂状のストルバイトと膀胱粘膜の剥離組織が

絡み合ったものでした。

 

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塊状物を取り出した後は、尿道から膀胱内を徹底して洗浄し、

切開部はモノフィラメントの吸収性縫合糸で閉鎖しました。

 

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縫合完了です。

 

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腹壁、皮膚を縫合し、手術終了です。

 

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術後数日は、尿道カテーテルを留置して膀胱の緊張を和らげます。

このカテーテルは3日後に取り除きました。

 

術後は極めて順調で、

カテーテルを除去した後も排尿は良好で、「イキミ」もなくなりました。

 

コメント:

猫の尿道閉塞はオスに多く発症し、殆どは砂状のストルバイトがプラグとなり、

尿道に詰まることで発症します。

 

詳しくは、以下のサイトが参考になります。

http://www.pet-hospital.org/cat-008.htm 

 

一般的には、尿閉解除後、尿道カテーテルを留置し、

しばらく経過を観察し、再発の可能性を注意深く見守りながら

食事療法、内科治療を併用します。

けれど、今回のように、極めて多量の結晶塊状物が膀胱内に

存在する場合は、膀胱切開法が最も適切な治療と考えられました。

 

 

症例②

 

タイガは「病院ものがたり 」の2004.9.14付で紹介した猫で、

結腸切除手術、会陰尿道造ろう術(陰茎切除)を5年前に実施しました。

神経麻痺で、排尿ができないので、この5年間、

飼い主のNさんが毎日カテーテルでおしっこを抜いています。

血尿が続くのでレントゲン撮影をし、結石が確認されました。

 

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レントゲン検査:

膀胱内に小豆大の結石が3個見られます。

猫では、このような大きさになるのは極めてまれです。

これは、毎日のカテーテルによる排尿手技が関連しているのでは?と考えています。

 

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飼い主のNさんが旅行で、タイガを預かりました。

この期間中に、結石摘出手術を実施しました。

 

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切開した膀胱から摘出された3個の結石です。

 

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摘出後は 

症例①と同様に膀胱内を洗浄し、

モノフィラメントの吸収糸で縫合します。

 

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腹壁、皮膚も型通り閉鎖、縫合し、終了しました。

 

以上、8月に実施した

2例の比較的まれなケースの手術症例をご紹介しました。