症例1・・・フェレット メス 3歳 BW1kg きさらぎ
主訴: 1ヶ月前に左後肢の踵部に血豆のようなできものができた。
気にすることはない。 FNA: 肥満細胞が多量に確認された。
症例2・・・フェレット オス 1歳3か月 BW1.2kg ルビコン
主訴: ワクチン接種時に左後肢の踵部に2mm径の腫瘤があるが、調べて欲しいとの希望あり。
気にしていない。 FNA: 肥満細胞が散見された。
治療: 症例1は5月20日、症例2は6月12日に切除手術を実施しました。
症例1: きさらぎ
初診時の左後肢踵部の外観です。
炎症性の出血があったためか、血豆のように見えました。
針生検(FNA)では顆粒をともなった円形、あるいは類円形の核を有する細胞が見られました。
これは肥満細胞と思われました。
その後、出血班は吸収し、腫瘤が残りました。
しばらく経過を見ましたが、消失することはなかったので、飼い主のSさんとも相談し、
切除することにしました。
術部を消毒し、ドレープをかけました。
本来、肥満細胞腫は大きくマージン(腫瘍境界周囲)を取る必要があるのですが、
この部分は、場所的に十分取れません。
フェレットのMCT(肥満細胞腫)は良性タイプが殆どなので、縫合できる範囲の切除マージンとしました。
切除ができました。
縫合を5針行い、強い緊張をかけずに終了しました。
手術数日後の検診時のきさらぎです。
フェレットの多くは、手術部位の縫合糸をきにしません。
きさらぎも殆ど気にすることもなく、無事に抜糸を終了しました。
これが腫瘍の組織所見です。400倍で撮影しています。
病理組織学的診断: 肥満細胞腫(Mast cell tumor)
真皮で肥満細胞腫の増生が認められました。フェレットでは良性と考えられている腫瘍性病変です。腫瘍境界で、完全に撮り切れています。
隆起部の表皮直下の真皮に小型腫瘍細胞の増生が認められます。
核小体が目立つ円形核と、トルイジンブルー染色でメタクロマジーを示す細胞質内顆粒を見る淡明で豊富な細胞質を有する、細胞境界明瞭な小型腫瘍細胞が、充実性シート配列で増生しています。
症例2: ルビコン
手術前の腫瘤の外観です。
きさらぎちゃんとほぼ同部位に発生しています。
FNAでもきさらぎと同じ肥満細胞の集塊が見られました。
ルビコンの手術では、電気メスを使わず外科バサミで切っていきました。
腫瘍を切り取りました。
縫合が終了しました。
無事に終わった後のルビコンです。
ルビコンも術部を特に気にせず、6月23日抜糸が終了しました。
病理組織学的診断: 肥満細胞腫(MCT)
コメント:
このように何の関わりもない2頭のフェレットに、同じ部位、同じ腫瘍が同時期に発生したことは、極めて珍しい経験でした。
解剖学的に、生活習慣的にできやすい場所なのか?
今のところよく解りません。
このように、皮膚の吹き出物のような小さな変化でも腫瘍の場合があります。
フェレットのMCTの殆どが良性なので、
内科的にステロイド剤を使って、経過を観察する選択もありますが、
オーナーとも相談たところ、早く解決したいお気持ちは強く
2例とも外科切除を選びました。
結果的に良かったと思います。
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