症例・・・T・プードル 1歳5か月 オス BW3.6kg リオン
主訴・・・6月8日朝に嘔吐、元気がない。今朝は食事与えず。
思い当たること・・・昨日(6月7日)テーブルの上にあった物が風で飛ばされ床に落ちた瞬間、
飲み込んでしまった。何か不明だが、緑色をしていた。
身体一般検査、血液検査では異常所見は確認されなかった。
単純レントゲン検査: 異物、閉塞所見の確認はできなかった。
治療: 皮下点滴、制吐剤
翌日来院し、帰宅後も嘔吐あり。状態は改善していないとのことだった。
追加検査:
造影レントゲン検査・・・造影用バリウム 10cc/kg 経口投与
投与10分後
胃からの造影剤の流れが悪く、昨日には見られなかった小腸内の異常ガス像が認められます。
投与3時間後
小腸には流れていますが、明らかに流れが停滞しています。
5時間後
通常、5時間経過すれば造影剤は殆どが結腸に達しますが、
未だ胃内に造影剤は残り、小腸内に停滞したままです。
造影剤検査の結果、腸閉塞による通過障害が確認されました。
飼い主のIさんに結果を説明し、原因除去のための開腹手術を決定しました。
手術はその日の夕方から、実施しました。
ドロレプタン、アトロピン、スタドール、ケタラールで導入し、
イソフルレン吸入麻酔で維持しました。
胃の確認もしたい為、やや上方正中部が切開部位になります。
腹壁切開部から確認の為に腸管を取り出したところ、回腸の途中に異物が閉塞していました。
写真右上に半月状に詰まっている部分が判ると思います。
拡大した閉塞部分です。
電気メスで腸切開をします。
摘出した直後の異物です。
造影剤が付着していますが、確かに緑色のゴム材質の円形ボタン型の異物でした。
摘出後は吸収性縫合糸で二重連続縫合しました。
取り出した異物はこの2つでした。
閉塞を起こしたのは、右側の2cm径のゴム製の円形物です。
左側はドライフードの袋の切れ端でした。ゴム製異物が閉塞したすぐ近位の腸内にありました。
テーブルから床に落ちたのはこの切れ端のようでした。
飼い主のIさんに術後このゴム製品のことを尋ねると、
ずいぶん前に(少なくとも数週間前)、ゴム製のラクビーボールの形をした犬用おもちゃを
齧っていて、欠けてしまったことがあったようです。
そのかけらのようでした。
とすると、数週間胃の中にあって、偶然今回、腸の中に進んで閉塞したということでしょう。
フード袋の切れ端が皮肉にも教えてくれた結果になりました。
術後のリオンです。
食後、一過性の嘔吐がありましたが元気食欲回復し、6日目に退院しました。
異物摂取は繰り返しやすいのでこれからも、気をつけなければね。
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