症例・・・セキセイインコ 黄ハルクイン オス 2歳3か月齢 BW29g BCS2 サフラン
初診時主訴: 1~2ヶ月に1度吐く。 尾羽が生えず、片方の風切羽が伸びない。
食欲あり。
レントゲン検査:
前胃の拡張所見
筋胃内のグリット量が多い(グリットインパクション?)
そ嚢内に食塊が満たされ、ガスの産生見られる
糞便検査: メガバクテリア(+) 細菌数の増加
診断: メガバクテリアによる前胃拡張症候群
脱毛、乱毛については各ウイルスの遺伝子検査の結果を待つことにした。
遺伝子検査(PCR)の結果: PD(パチェコ病)(-)
PBFD(オウム類の嘴‐羽毛病)(+)
BFD(セキセイインコのヒナ病)(-)
CHL(クラミジア症)(-)
追加診断:PBFD
コメント:
症例のセキセイインコの名前はサフランです。
とても可愛い顔をしていますが、一見して羽の伸び方が乏しく、羽毛の乱れが目につきます。
羽毛の異常が見られる原因は様々であり、原因が特定できないことも稀ではありません。
サフランは遺伝子検査を実施したことから、PBFD(サーコウイルス感染症)が脱毛の原因ということが判りました。
PBFD(オーム類の嘴‐羽毛病)はPBFDウイルス(サーコウイルス科、サーコウイルス属)の感染によって引き起こされ、重篤かつ致命的な感染性疾病です。
PBFDは主に3歳齢以下のあらゆるオウム・インコ類に感受性が強く世界中で発生が見られます。
症状は
甚急性・・・多くは初生ヒナ。肺炎、腸炎、体重減少後死亡。
急性・・・1ヶ月前後の幼鳥。沈鬱、発育羽毛の異常、そ嚢食帯、下痢、重篤になれば死亡。
慢性・・・若鳥~成鳥。羽鞘の残存、折れ、くびれ、ねじれ、発育停止、ストレスライン、
変色などの羽毛障害、進行性の脱羽、脂粉の減少、嘴または爪の過長や脆弱化。
また、この病気ではリンパ系器官が障害され、免疫不全となることが知られています。
エビデンスとしての有効な治療法は現在のところありません。
更に詳細は以下に説明されています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/PBFD
サフランのPBFDが診断できたのは今年の3月ですが、症状が出始めたのはそれより数か月前ですので、明らかに慢性型と言えます。
今後も注意深い検診と合併症の治療が必要となります。
現在、MB症の治療と合わせてインターフェロンの治療を続けています。
この病気は長期的な治療管理と看護が大切です。サフランも飼い主のTさんも根気よく頑張ってほしいと思います。
友人のセキセインコがPBFDに感染したようです。子供がいるので、PBFDが、人間に感染しないか心配しています。いろいろ調べましたが、人間には感染しないという文献に出会っていません。ご教授お願いいたします。
PBFDは鳥の感染症であり、私の知る限り人に感染したという報告も文献もありません。 同じ部屋にいれば、ウイルスの暴露は人でも考えられますが、宿主特異性により人の細胞では増殖できないと思います。
鳥インフルエンザのように、他の動物を介して変異を繰り返し、人に感染する力が生まれる可能性のあるウイルスもありますが、PBFD感染の挙動を考えると、そのような力はないと思います。
PBFDよりもオーム病(クラミジア感染症)は、人への感染が知られています。また、アスペルギルス、サルモネラ、マイコプラズマなども免疫力の低下した人への感染は否定できません。
鳥の糞や尿は直ぐ乾燥し空気中に飛沫されますから、塩素系の消毒薬を使った部屋の消毒や、空気清浄器による換気は必要だと思います。
有仁
内で飼っているセキセイインコ(生後4カ月)のきーちゃんも
2~3年前からサフランちゃんより毛が抜けてしまっています。
以前近くの動物病院に連れて行ったのですが、診断結果はストレスでした、でももう一羽のインコは同環境で飼育しているのに
異常なくらい元気です。
やはりもう一度病院に連れて行った方がいいでしょうか?
佐藤様へ
ご心配ですね。
生後4カ月で、サフランちゃんのように毛が抜けているとすると、
ストレスだけではなさそうです。
若いセキセイインコの脱毛が必ずしもPBFDだけとは言えませんが、
可能性の一つとして検査することは必要だと思います。
どこの病院でも、遺伝子検査の依頼を受けてくれるとは限りませんので
問い合わせて、検査をしてもらえるのなら、
検査したほうが良いのでは、と思います。 有仁