症例・・・日本猫  オス  8歳  BW6kg  チー

プロフィール・・・数年前より左右の臼歯奥(口峡部)が赤く炎症を起こし(口内炎)痛がり、

         他院で治療を受けていた。治療を受けると一時的に良くなるが、また再発を

         繰り返す。 ウイルス検査で FELV(+) FIV(-)とのことだった。

  セカンドオピニオンで当院に来院。

現症・・・食欲はあるが、痛みで食べるのをためらう。その他の一般状態は良好。

      口腔内の検査を嫌がる。

ウイルス検査...再度 白血病ウイルス検査(FELV)、エイズウイルス検査(FIV)

           PCRによるヘルペスウイルス検査、カリシウイルス検査を実施した。

 

検査結果: FELV(-) FIV(-)・・・2回実施

       PCRによるヘルペスウイルス検査(-)、カリシウイルス検査(+)

診断: カリシウイルスが関与した口内炎

 

概要: このように慢性経過で猫の口腔内に炎症をおこす疾患を

     専門的には「リンパ球性形質細胞性歯肉炎‐口内炎‐咽頭炎」とも呼ばれ、

     口腔の軟部組織の炎症、潰瘍化及び増殖をもたらす、中、高年猫の一般的な疾患です。

     原因は様々なウイルスの関与と、口腔細菌抗原に対する過敏反応の結果現れる

     免疫介在性要素を含む多くの要因が複雑に絡み合っていると思われますが、

     真の原因は不明です。

 

治療: 家での内服薬の経口投与ができないとのことで

     定期的抗生剤、副腎皮質ホルモン剤の注射

     麻酔下でのCO2レーザー治療

CO2レーザーの効果・・・組織を蒸散(細胞内液を蒸散させ、細胞を壊死させる)させることで、

               炎症組織を取り除き、治癒組織の再生を促進させる。

 

 

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ケタラールで麻酔導入し、イソフルレン吸入麻酔で維持。

治療前の口峡部の炎症です。かなり痛そうですね。

 

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炎症部位をCO2レーザーで蒸散しています。

レーザーは末梢血管を自動的に閉鎖(止血効果)し、末梢神経断端も閉鎖(痛みを軽減)するので

術後の疼痛が緩和されます。

 

 

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蒸散後の術部です。

レーザー治療は多くは良好な結果が得られますが、永久的なものではなく、定期的に

同様な治療が必要となることもあります。

 

 

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口内炎は猫の口腔内の衛生状態が強く関連します。

歯石、歯周疾患は口内炎を悪化させます。

家でも日頃から口腔内を覗く習慣を心掛け、早期発見、早期治療が大切なことは

云うまでもありません。