症例・・・M・ダックス メス 5歳齢 BW6.5kg リリー

主訴・・・狂犬病予防注射、フィラリア予防のため来院 食欲元気あり。

     3月に発情出血あったが、その後足の付け根の乳腺が腫れているのが気になる。

現症・・・左側第4乳頭外側(鼠径部)腫大し、鼠径ヘルニアと診断。

 

* 飼い主のKさんと相談し、3日後に整復手術をすることにしました。

 

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麻酔はプロポフォールで導入し、イソフルレンで維持しました。

左側鼠径部の膨らみを中心にドレープをかけます。

 

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皮膚を切開するとすぐ下は脂肪層が見られました。

 

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この皮下織の脂肪層は腹腔から出てきている脂肪塊に癒着、繋がっていました。

 

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皮下脂肪層のヘルニア嚢を破ると、ヘルニアを形成していた腹腔の脂肪塊が露出されました。

 

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この脂肪塊を更に引っ張ると写真のように子宮が出てきました。

この脂肪塊は子宮間膜にたっぷりと形成された脂肪塊であることがわかりました。

 

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皮下織のヘルニア嚢を作っていた脂肪層を切除しました。

 

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ヘルニア内容である子宮間膜の脂肪塊を腹腔に戻しました。

大きく開口した鼠径管(ヘルニア孔)が確認できます。ここには鼠径動静脈が走っているので注意が必要です。

 

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ヘルニア孔を縫い縮めます。血管を傷つけないように注意します。

 

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ヘルニア孔を閉じることができました。

 

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皮下織の脂肪層を切除したので、この部分に空洞ができてしまいます。

ここに漿液が貯留するのを防ぐためにドレーンチューブを設置します。

 

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手術が無事に終了しました。

 

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術後に入院ケージに戻った直後のリリーちゃんです。

回復はきわめて順調で、4日目にドレーンを除去し、10日目に一部抜糸、14日目に残りの抜糸を

終了しました。

 

コメント: 

鼠径ヘルニアはメスに多く発生します。先天的に鼠径管が大きかったり、後天的には腹圧がかかるような状況が続くことで鼠径管が広がり、腹腔内の脂肪や臓器が飛び出してきます。

脂肪だけの場合は軽い不快感程度ですが、時に膀胱や腸管がヘルニアを起こすと、重篤な症状になります。

今回のリリーちゃんの場合は発情による子宮肥厚が腹圧が高まる原因と考えられます。

このまま放置すれば、子宮の一部が飛び出したかもしれません。

ひどくならないうちに早期発見、早期治療で一見落着しました。