症例・・・ポメラニアン 去勢オス 11歳
プロフィール・・・H21.3月 よだれが垂れて食欲が低下。
上顎犬歯の歯根膿瘍と重度歯石沈着あり。
歯石除去をアドバイス。 1週間後、麻酔下で犬歯の抜歯と歯石除去実施
舌根部に軽度の潰瘍があり、歯石の物理的刺激?
抜歯と歯石除去後は、よだれも少なくなって食欲も回復したが、
4月23日よだれがまた多くなったと来院した。
現症・・・常によだれが糸をひいて口から垂れている。お腹は空いているが、食べようとすると
よだれが激しく出てくる。食事の嚥下がうまくできない。
治療プラン: 舌根部の潰瘍がひどくなているようなので、飼い主に説明し、
再度麻酔下での口腔内の精査と食道チューブの装着を実施しました。
口腔内を精査するためと、食道チューブの開口部を頸部に設置するために麻酔を施し、
頸部の毛刈りと消毒を行いました。
舌根部の腹側は潰瘍と癒着で、舌が動きづらくなっていました。
潰瘍部分は背側まで達し、簡単に組織は崩れるほどで中央は壊死が起こっていました。
舌の表側(背側)部分です。
中央がクレーター状に欠損し、潰瘍と壊死が混在しています。
この為、食べ物を嚥下する時の舌の運びに支障が出る為、飲み込めないのです。
このような激しい潰瘍がなぜ起こったのかを考えると、
悪性腫瘍の可能性も否定できないので、組織片を病理検査することにしました。
嚥下ができない状態のため、食道から胃に直接ロブネルカテーテルを設置しました。
ここから定期的に口腔を通さずに流動食を与えます。
一日に4回~5回 a/dという療法食を液状にして与えました。
飼い主への説明
舌の潰瘍が悪性腫瘍の可能性があること、現段階では自力での採食ができないことから
しばらくは食道チューブからの給餌が必要なことを説明しました。
この仕事をしているといつも思うのは、ペットを飼育者には様々な考え方があり、特に難治性の疾患を目の当たりにしたときにどう判断するかは結論が別れるところです。
金銭的なこと、年齢、介護ができるかどうか、家庭の事情、痛い思いはさせたくないなど複数の要因で結論を出すのですが、どれが正解という訳でもないのです。
この子の飼い主は、食道チューブを取り除く結論を出しました。
列挙したいくつかの要因があったのでしょう。
病理検査結果が出る前でしたので、スタッフ一同とても残念でしたが、飼い主の決めたことを曲げることはできません。
数日後、このチューブを抜いた後退院していきました。
弱拡大:
強拡大:
病理組織学的診断: 扁平上皮癌
悪性腫瘍性病変である扁平上皮癌の浸潤性増殖が認められました。
口腔粘膜を含み二次的な炎症による好中球浸潤を伴う組織片全体に及んで、
核小体明瞭で大小不同な卵円形異型核と豊富な細胞質を有する癌細胞が不規則な小胞巣を形成して増殖しています。
癌細胞の増生巣内には核分裂像が散見され、角化傾向ははっきりしない低分化型の扁平上皮癌で、個々バラバラになった癌細胞が浸潤性に拡がっています。
文献から:
舌に発生する腫瘍はメラノーマ、扁平上皮癌、血管肉腫、線維肉腫、肥満細胞腫などが報告されている。
腫瘍の挙動は扁平上皮癌では扁桃を除く口腔腫瘍例と比べて転移性が高い。
舌先端の発生では早期発見すれば、マージンを含む切除が可能なので予後は期待できる。
舌を40~60%切除しても一時的な補助のみで採食可能という報告がある。
舌基部での発生は脈管系が発達しているので転移の可能性が高く、切除は難しい。
特に扁平上皮癌は予後不良であり、放射線治療を実施することもあるが、治療反応は思わしくない。
こんにちは、我が家の老犬は、血液検査の結果肝不全と心不全、腎不全の傾向もあります。先日舌の右側の先端がギザギザになっていることを発見し一週間後に往診の医師にきいたところ、老犬ではそういうこともあります、と言われました。
しかし調べてみたところ腎不全では、血栓や血流が悪くなることに由来する舌先端の壊死が起きることもあると書いてあり気になっています。
今の状態は、先述のように舌の右側先端がギザギザであり、白っぽい感じです。また先端から繋がる右側の舌のふちが全体的に白っぽくなってしまっております。
年末から食欲が落ち今は寝たきりでシリンジでペットスエットやスペシフィックCKW、ロイヤルカナン肝臓サポート缶を500キロカロリー分位、毎日与えて自宅で酢酸リンゲルを180ミリ×2回/日しています。
老犬で、多臓器の機能低下があるということで
御心配ですね。
舌の病気は、原因も様々です。
高齢ということなので、腫瘍や血行障害による壊死も
考えられます。
外科手術の適応症例かの判断は慎重であるべきでしょう。
まずは栄養維持の管理が重要課題ではないでしょうか?
有仁
はじめまして。
検索サイトから、こちらへやってまいりました。
6月に7歳雌の舌の一部(右の犬歯があたる部分)が赤く腫れて少ししこりになっているのに気づき
病院に行きました。注射針での検査は一部しか調べられないので、小さく切り取って検査しましょうと言われ、5ミリ四方を切っていただきました。結果、慢性の炎症であろうということで悪いものは見つからなかったとのお話に大喜びしていたのですが…。
10月中頃に傷口から突起物(血豆?)が出て来て、出血を繰り返すようになったため、10月末、傷口をさらに少し大きく切って、傷口を焼いていただきました。その際、2度目の切った部分を検査機関に送っていただいた結果が血管肉腫です。すぐに再手術、今日、舌の右半分を比較的大きく切っていただきました。
さて、ネットで見るところほとんど良い話の聞かれない血管肉腫ですので、これからどうすればいいのか、考えあぐねております。一応まだ元気ですので、なるべく普通の生活を心がけようと思いますが、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか? また今後、抗がん治療のようなものを併用する必要はないでしょうか?(今の病院では、今日切り取った舌の部分も私がお願いするまでは検査機関にお出しになるおつもりはないようでしたので、どちらかにセカンドオピニオンをお伺いしたいと思っています。当方九州在住です)
お忙しいところ、誠に申し訳ありませんが、ご意見をお伺いできればと思います。