症例: ビーグル オス 11歳4か月 BW15kg ジロー
経過: H20年8月 腰がふらつき、階段が登れないとの主訴で来院
レントゲン検査で胸腰椎の椎間板ヘルニアと診断
治療:ステロイド剤、神経賦活剤、漢方薬の内科治療、レーザー治療で
1ヶ月後、歩行状態正常に戻る。
H21年4月18日 後肢に力が入らず、前肢だけで歩くようになってしまった。
両後肢の不全麻痺、 深部痛覚はあり。尾を振ることは出来る。
レントゲン検査: 前回と同部位の椎間板ヘルニアの再発と診断(T12~L3)
治療: 前回と同様の内科治療、レーザー治療を実施したが、回復が得られず、
外科手術を踏まえたMRI検査についてオーナーのOさんと相談した結果
5月1日 MRI検査を実施することになりました。
T(胸椎)12~13、13~L(腰椎)1 の椎間板が前後の椎間板に比べて狭いことがわかります。
MRI検査: キャミック静岡 http://www.camic.jp/index.html
キャミック静岡は5月中旬オープンなのですが、
特別にお願いすることができました。
今日が初めての作動になるため、準備を入念に行っています。
機種は日立メディコ 永久磁石タイプ0.3T AIRIS Elite です。
これは隣室にあるCT装置です。
日立メディコ マルチスライスCT 4列 ECLOS
CTとMRIの違いは何でしょうか?
CT: X線を用いて体内を撮影し、コンピューターで映像化します。
適応疾患・・・頭部(耳、鼻など)
胸腹部(腫瘍、転移の確認など)
骨格の異常(損傷、奇形、腫瘍など)
異物の存在
MRI: 磁気を用いて体内を撮像し、コンピューターで映像化します。
適応疾患・・・脳疾患(水頭症、脳炎、腫瘍など)
脊髄(椎間板ヘルニア、腫瘍、損傷、梗塞など)
ということになります。
ジローが麻酔準備に入りました。
プロポフォール麻酔で導入、イソフルレン吸入麻酔で維持します。
ジローは麻酔状態に入りました。
撮影用のプロテクターが装着されます。
仰向けのポジションになり、撮影の準備ができました。
撮影ポジションに入りました。
撮影を続けながら、室外からコンピューター処理をします。
更にモニターで映像化します。
現われてきた画像を基本にして、様々な角度からの断面をコンピューターで描き出します。
この写真はジローの胸腰部です。
中央に白い輪郭でとらえている(造影処理)のが脊髄です。
左側に下側から黒い追加物質が脊髄を強く圧迫している所見が判ると思います。
同様に更に2か所圧迫所見が見られます。
T12~T13、T13~L1、L1~L2 の椎間板ヘルニアが確認されました。
(T:胸椎 L:腰椎)
このMRI検査の結果は、飼い主の0さんに説明され、
このまま内科的治療では、歩行できるまでの回復は難しいとの判断により
相談の結果、当院で外科手術を実施することになりました。
5月6日の午後予定を組んでいます。
結果については後日、掲載したいと思います。
初めまして。
私はミニチュアダックスフンドを飼っているのですが、最近ヘルニアの症状があり、かかりつけ医に相談に行きました。診断結果では、やはりヘルニアの疑いがあるとの事で、■抗炎症剤 ■ビタミン剤 の処方がありました。しかし先生から、まだ2歳7ヶ月で、MRIをとっても写らない確率が高いと言われ、薬の処方しかいただけませんでした。この治療内容は、正しいのでしょうか?素人なので、全く解りません。どうか、アドヴァイスをいただけませんでしょうか?よろしくお願い申し上げます。
椎間板ヘルニアの症状の程度(グレード)によって、治療も様々です。
軽いものなら、内科治療、理学療法で回復します。
内科的治療には時間を要する(1ヶ月~3ヶ月)こともあります。根気強さも必要です。
大切なことは神経学的検査でこのグレード分けを正しく行うことです。
椎間板ヘルニアの位置の特定を正確に判断する検査がCTやMRI検査です。また、ヘルニアにより脊髄神経がどの程度圧迫されているかも判ります。
2歳7か月だからMRIで写らないという理由がよく解りません。
麻酔をかけること、費用がかかること、MRI施設は限られている、それでも確定診断をしたいというのであれば、MRIは有効な手段だと思います。
有仁