5月4日のブログに甲斐犬の子宮蓄膿症を掲載しましたが、数日後M・シュナウザーでも同症の手術がありました。この仕事をしていると、同じ病気が続くことがよくあります。動物のバイオリズムと季節、気候が関連性を持っているからでしょうか?

 

症例:M・シュナウザー 、メス 、11歳、BW4.5kg、 プッティー

* この症例は他院からの転院でした。4月の初旬に狂犬病予防注射を受けましたが、その頃から

  いつもに比べ元気食欲が低下してきたとのことでした。血液検査、腹部のエコー検査では著変なし。抗生剤、抗炎症剤等の内服をしましたが、状態は変わらない為、紹介で当院に来院しました。

  初診は4月10日です。昨日嘔吐、下痢がありました。

  当院で再度血液検査、レントゲン検査を行いましたが、やはり異常所見は見当たりません。

  ただ、2週間前に発情があったということが、少し気になりました。

治療プラン:

 1週間前から食欲が低下し、嘔吐下痢もあるとのことで一日お預かりして静脈点滴をすることにしました。点滴250ccの中には制吐剤、抗生剤を加えました。

この治療の効果があり、元気も出て夕方は与えた療法食を完食しました。

夕方帰宅。

翌日、同治療。

 

10日後、再び食欲低下。再検査を希望されず。

      治療:皮下輸液、抗生剤

18日後 食欲更に低下。

      来院時に軽度の腹部膨満があったので、エコー検査を実施。

エコー検査: 子宮の腫大と液体貯留所見。子宮蓄膿症と診断。

      治療: 静脈点滴(4月10日と同)

20日後 開腹による子宮両卵巣摘出手術実施。

 

 

 

 

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静脈点滴は術前より開始。

麻酔はミタゾラム、スタドールで前処置後、イソフルレン麻酔で導入、維持しました。

 

術中は、心電図、酸素飽和度、呼気CO2濃度、 血圧、呼吸等をモニターします。

人工呼吸装置も準備しておきます。

 

 

 

 

 

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 開腹すると、写真のように膿が溜まり腫大した子宮が出てきました。

 

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左右の卵巣側を結紮し、切り離したところです。

 

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完全に摘出できました。

 

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型通り閉腹、縫合して終了です。

 

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手術が終了し、麻酔から覚める前のプッティです。

 

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術後は次の日も静脈点滴を続けました。

術後2日目からは食欲が出始め、その後は順調に経過しました。

この写真は退院後で抜糸に来院した時のスナップです。

すっかり、元の元気なプッティに戻ったとのことでした。

 

コメント: 

 子宮蓄膿症は早期に見つけ、早期に外科的摘出をすれば完治する病気ですが、

適確な治療がされなければ、重篤になり腎不全、子宮破裂、DICなどの合併症をおこし命も奪われます。

今回、初回時にはこの病気の特徴的所見が認められず、点滴治療で元気が出てしまったので

その後飼い主も来院せず様子を見てしまい、この病気の診断が遅れたことは反省点でした。

(飼い主も他院での狂犬病予防注射?が食欲低下の原因と思っていたのです。)

 

初期の診察、検査を系統だててもれなく実施し、鑑別診断をきちんと行うことの重要性を再認識させられた症例でした。