4月26日(日)の朝6:30、病院の電話が鳴りました。
「うちの飼い犬のチワワが陣痛で破水したんですが、子供が出てこないんです。朝早くで申し訳ありませんが、診てもらえないでしょうか?」
清水区のKさんと名乗り、初診でした。
「かかりつけはいないのですか?」
「行きつけの病院が近くにあるんですが、こんな早朝なので電話しても通じません。」
このようなケースは正直辛いのですが、もう破水しているらしいので、断る訳にもいきません。
「わかりました。病院を開けますので連れてきてください。」
ということになり、来院を待つことになりました。
待つこと20分、Kさんがお嬢さんと来院しました。
ロングコートチワワのラムネちゃん、体重4.24kg、4歳半で過去に1回出産歴があります。
1回目は無事生まれたので、今回も大丈夫だろうと思っていたようでした。
多忙なこともあり妊娠後の検診も滞っていたので、何頭妊娠しているかも不明でした。
すぐにレントゲンを撮りました。
胎児は4頭、充分成長しています。骨盤内にまだ入ってこない状態で、左右の子宮のほぼ同じ位置に2頭並んでいます。
2頭が邪魔をし合う形で、骨盤内に降りられずどちらかが最初の破水をしたようでした。
この場合は迷うことなく帝王切開で胎児を取り出す必要があります。
Kさんに説明をしている間に、副院長に手術の準備と数人のスタッフに緊急の呼び出しをしてもらいました。
日曜日の朝です。みんなゆっくり寝ていたいのは当然ですが、これが動物病院の辛いところですね。
スタッフは朝食もせず、急ぎ集まってくれました。(本当に感謝です!!)
帝王切開は、母親はもちろん胎児を助ける為に麻酔が重要です。
すべての麻酔薬は胎児にも少なからず影響しますので、影響が最小限の麻酔法が必要です。
ラムネちゃんは超短時間麻酔薬のプロポフォール単独で導入し、すぐにイソフルレン麻酔に切り替えました。
麻酔状態に入ったので、手際よく滅菌消毒を行い開腹しました。
子宮を切開すると4頭の胎児を取り出し、胎児係りのスタッフに手渡しました。
胎児の臍帯をしばってから胎盤を切断し、蘇生処置です。
帝王切開では麻酔の影響で呼吸が微弱になることが多い為、しっかり身体をこすり呼吸を促します。
破水をしてしまった胎児が「大丈夫かな?」と心配したのですが、呼吸を始めたようです。
子宮を縫合しながら一安心です。
写真は手術直後のラムネの様子です。
皮膚の縫合は、赤ちゃんがおっぱいを飲むときに傷つけないようナイロン糸で縫います。
おっぱいは搾るとすでに出てきます。
子宮に収縮の促進とおっぱいの出がさらに良くなるよう、術後にオキシトシンを投与しました。
母親のラムネがしっかりと覚醒するまでは赤ちゃんとは別々です。
赤ちゃんは① オス 141.1g ② オス137.2g ③ オス117.6g ④ メス133.3g でした。
その後60分後に親子の対面、ラムネは経験もあるためすぐに赤ちゃんをお腹に抱え、おっぱいを与え始めました。
翌日の検診時の赤ちゃんとのツーショットです。
体重の重かった2頭は体重が増えていましたが、他の2頭は体重が落ちています。
この時期からすでに競争社会です。
Kさんには体重が増えない赤ちゃんのケアをアドアイスしました。
ラムネも授乳期用の高栄養食をしっかり食べて、乳熱にならないよう気をつけることが肝要です。
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