今日、野鳥が来院しました。見たところ猛禽類です。

この鳥の種類がわかる人がいますか?

すぐに判ったら、かなりのバードウォッチャーです。

 

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正解は「チョウゲンボウ」です。

野鳥図鑑から引用すると、

  全長30~33㎝。チゴハタブサよりも尾が長くて翼の先は尖っていない。本州中部と北海道の海岸や川沿いの断崖の窪みに産卵するのが普通であるが、樹洞の例もある。最近は市街地の建造物の隙間利用の例も多くなった。ひらひらしたはばたきと短い滑翔を交互にして飛び、地上の獲物(ノネズミ、小鳥、昆虫)を狙って低空飛行する。キイキイキイと鳴く。

 

そうそう、動物病院に来院する機会はない鳥です。

でななぜ、ここにいるか?

 

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種明かしをすると、このチョウゲンボウは元々、1年前に日本平動物園に保護収容されたのです。

捕獲された経緯はよく判りませんが、理由は失明です。すでに、左眼は眼球が委縮し、右目は白内障で光を失っていました。

このようなケースの場合、動物園では飼育ボランティアを募集します。飼育の技術と経験を審査し、

任せられそうな時には、ボランティアに委ねるのです。

当院のスタッフの一人が、名乗りをあげたのです。名前を「ゲン」と名付けました。

問題は餌でした。完全な肉食で基本的に生餌しか食べません。毎日、生餌を与える必要があるのです。

生餌といっても姿さえそのままなら死んでいてもゲンは食べてくれます。

子ネズミとウズラのヒナの冷凍がゲンの主食になりました。もちろん解凍して室温に戻して与えます。

そうこうするうちに1年が経過し、今日は定期的に実施している「伸びすぎたクチバシ」を切りに来院したという訳です。

人工的な餌では、やはり自然で暮らすことで得られる豊富な栄養が不足します。また運動も圧倒的に足りません。くちばしを弱くしてしまう理由がそんなところにもありそうです。

 

それでも、献身的な保護飼育で、ゲンの命は1年延びました。

その意味では、ゲンは幸せではないでしょうか。

 

(追記: この記事は病院ものがたりに掲載しました。)