症例・・・セキセイインコ  8週齢 オス 25.4g  ピースケ

プロフィール・・・子供の誕生日に、ペットショップから購入した4週齢のヒナを友人からプレゼントされ

          た。(小鳥を飼育するのは今回が初めてである。) 

          購入したペットショップから、3回/日だけ差し餌をやるように指示されたので、

          その通り与えていた。

          差し餌はふやかしたあわ玉と栄養粉末(ヒナフトール)。

          始め頃はまだ足りなそうな程食欲旺盛だったが、一週間前から食欲低下が見られ、

          昨日から、歩けなくなった。

          ペットショップに相談したら骨折かもしれないので、

          病院で診てもらうよう指示された。

     他院で診察を受け、栄養剤?を飲ませてもらい帰宅後、急に動かなくなった。

現症・・・脚麻痺があり、ひどく衰弱している。

処置・・・入院し、インキュベーター内で暖房、酸素吸入。強制給餌を予定。

     但し、落鳥(死亡)する可能性も十分あることを入院時に理解していただいた。

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ひどく衰弱し床にうつ伏して、身体は冷たく、呼吸時の胸の動きだけが確認できる状態でした。

脚には力が入らず、伸展、屈曲も容易で、外傷もなく痛がる様子もありません。

まずは、インキュベーター内での保温と酸素吸入、身体が温まったらレントゲン、次に強制給餌の順序でプランを立てました。

 

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レントゲン検査では、骨折、脱臼、骨の変形等は見られません。

心臓と肝臓が作り出すウエストラインが消失ぎみであり、心臓拡大があるようでした。

 

その他の検査

 糞便検査: メガバクテリア(+)

 

診断: プロフィールとレントゲン検査、糞便検査から

      ビタミンB1欠乏症(多発性神経炎) 

      メガバクテリア症

 

❉ ビタミンB1欠乏症(多発性神経炎)

    脚気とも呼ばれ、末梢神経の軸索障害と循環障害をおこす疾患。欠乏時にはエネルギー代謝異常が現れ、血中のビルビン酸及び乳酸値が上昇し、これが循環障害起こし、心拡大、心不全につながる。

原因: 市販あわ玉のみの差し餌。(市販されている粟玉には実際にはほとんど卵が入っておらず、ムキ餌と栄養的に変わらないのが現状である。)

   巣立ち近くのヒナは活動量が増し、ビタミンB1の消費量が増すので、欠乏しやすくなる。

   消化管内感染症があると、吸収不足から更に欠乏が進行する。

 

ピースケは1日3回しか差し餌を与えられず、量的にも、栄養的にもかなりの不足が考えられました。

合わせて、メガバクテリア感染が更に状態を深刻化させたと思われました。

 

 

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治療: 身体が温かくなりだした3時間後から強制給餌を始めました。

     (20%ブドウ糖1CC+アミノ酸入ビタミン剤1滴+デカドロンシロップ1滴)

     これを1回に0.2~0.3㏄づつ計3回、1時間毎にそ嚢内に注入しました。

 

    誤嚥せず、嘔吐もないことを確認し、

    フォーミュラーAA(ラウディブッシュ)に次の薬剤を入れ、0.2ccづつ、2時間毎に

    そ嚢内給餌しました。

     (アモキシリン、アムフォテリシンB、アミノ酸入ビタミン剤、B‐コンプレックス(ネクトン) )

 

 

 

 

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2日後、(粟玉+ケイティーフォーミュラーペースト)を自分から、ついばみ始めました。

排便が確認できるようになり、夜~朝にかけて10個の排便がありました。

強制給餌の量を1回に0・4㏄に増やし、回数は減らしました。

 

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入院から4日目、体重は変わらず25.3gですが、グルーミングを頻繁にするようになり、後足を使えるようになり、起立が可能になりました。

自分から、殻付シードを間断なく食べるようになり、強制給餌はストップしました。

そこで、飲水溶解用の必要な薬剤を処方して、昨日、退院としました。

飼い主のOさんに喜んでもらえたことは言うまでもありません。

正しい食事管理と適正環境の重要性を再認識させられた症例です。