症例・・・ウサギ(ネザーランドドワーフ) 3か月齢 メス Bw434g  ココ

 

 

 

ココ1.jpg

 

 

 

現症・・・昨日の夜から突然、首が右側に傾いてしまう。動こうとするとぐるぐる回ってしまう。

     よく見ると目も揺れている  食欲は普通にある

上記の主訴でF市からKさんが来院しました。外耳疾患を除外するためにレントゲンを撮りました。  

 

 

ココ3.jpg  

 

 

ウサギの斜頸の鑑別リストの中に、中耳炎、内耳炎があります。多くはミミヒゼンダニ、細菌、酵母菌の慢性重度感染が原因です。診断は耳道内検査とレントゲンでの鼓室胞の陰影度(炎症があると白くなる)で判断しますが、どちらも正常範囲でした。

ココ2.jpg

 

 

眼球振盪、旋回運動を伴った斜頸の鑑別診断リストは次のようです。

1、エンセファリトゾーン症

2、パスツレラ症

3、内耳疾患

4、外傷

5、中毒、

6、栄養障害

7、腫瘍    などです。

年齢、臨床症状、可能な検査、環境、飼育背景等の総合的情報で絞り込みます。

ココはエンセファリトゾーン(Ez)が最も疑われました。

Ez症の診断として抗体検査が可能ですが、抗体の上昇が必ずしも現症の原因と断定ができないため、確定診断にはなりません。

多くの場合、総合的情報の絞り込みの上で仮診断を行い、治療に進みます。

仮診断: エンセファリトゾーン(Ez)症

治療: フェンペンタゾール、プレドニゾロン、エンロフロキサシン、プリンペラン

      Ez症の第一選択薬はフェンペンタゾールです。

      プレドニゾロンは神経症状を抑える為に使用します。

      エンロフロキサシンは二次感染、パスツレラ症の可能性も否定できない為です。

      消化器運動の維持にプリンペランも使います。

以上の治療をココに処方しました。6日目は体重も30g増え、斜頸はあるけれど、旋回運動と眼振は治まってきたようです。

治療は4週間~6週間は必要になるので、根気よく頑張ってほしいと思います。

 

❉エンセファリトゾーンとは?

  微胞子虫といわれる原虫による疾患で、主に中枢神経系を侵す。

  症状: 神経症状(斜頸、眼振、四肢不全麻痺、てんかん様発作)

       眼疾患(ぶどう膜炎、眼房内膿瘍、白内障)

       腎疾患、肝疾患、消化器症状(下痢、胃腸うっ帯)

  治療法:特効薬は無い。フェンペンタゾールが最も効果的であるが、根治することは難しい。

       症状のコントロールが治療目的となる。