症例・・・ドワーフ・ウサギ メス 7歳4か月齢 チヒロ
主訴・・・2週間前に腹部の腫瘤に気が付く。徐々に大きくなってきた。よく舐めている。
血液検査・・・HCT 31・8% ↘(正常値35~50%)で軽度貧血、 その他の項目は正常範囲
暫定診断・・・乳腺腫瘍
治療・・・避妊手術も含めた腫瘍摘出術の必要性を説明したが、手術のリスクを飼い主がまだ受け入れられないとのことで、経過を見ることになった。
20日後、舐めることで腫瘍表面が破れ、出血するようになった。この時点で、乳腺腫瘍だけの切除を飼い主が了承した。
23日後の手術前の血液検査でHCT 19・3%と貧血が進行していて、出血量が見た目より多いことが考えられた。
腫瘍は長径が5cm程あり、硬く隆起している。表面は破れ、瘡蓋(かさぶた)を形成している
イソフルレンで麻酔導入し、術中のモニターコードをセットします。
短時間で手際よく、腫瘍を摘出します。
ウサギは縫合糸を噛んで切ってしまうので、切開縁に糸を出さないマットレス縫合をします。
切除腫瘤は50㎜×30㎜×22㎜のやや不整の硬い充実性腫瘤でした。
チヒロちゃんは麻酔から覚めると、1時間ほどしてから野菜を口にして、順調な回復を見せました。
病理組織学的診断: 乳腺管癌
乳管上皮由来の悪性腫瘍性病変(乳癌)が認められました。
真皮から皮下に及んで、充実性の多結節状の腫瘤が形成されています。腫瘤内では核小体明瞭で大小不同な円形不整形核を有する癌細胞が、腺腔様配列傾向をわずかに有する充実性小胞巣を形成して密に増生しています。周囲組織に向け浸潤性に拡大し、皮膚には潰瘍を形成しています。
腫瘍性境界は比較的明瞭で、取り切れています。脈管侵襲は検索した範囲では見られません。
その後、抜糸も終わり、2か月後の現在、再発は見られていません。
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