症例・・・ロングコートチワワ  5歳  避妊メス  アン

プロフィール・・・幼犬時より月に1~2回嘔吐、食欲不振を繰り返す

          その他は特記すべき異常所見なし

症状・・・食欲低下、嘔吐 体重の減少  血液検査・・・白血球増加(23000)

造影検査・・・造影剤の消化管通過障害 小腸拡張

診断・・・原因不明の腸閉塞

治療・・・外科的開腹による原因探求と原因除去 

 

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pict-DSCF0263.jpg 開腹所見・・・回腸壁に腫瘤が形成され、腫瘤を中心に空腸の途中から全回腸が癒着を起こし、一つ  の塊を作っている。

 

 

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癒着部分は時間が経過している為か、剥離が全く困難な状態。

空腸・上行結腸吻合術実施。( 回腸全域の切除)

 

切除後は腹腔内を洗浄し、型通り閉腹した。 pict-DSCF0267.jpg

切除した腸の病理組織検査結果・・・メッケル憩室

 概要:卵黄管の開存によると考えられる憩室が形成されている。胎生期の組織の退化停止による病変。一部は漿膜面にも及ぶ強い炎症が認められ、さらに進行すると腹腔内へ及んで腹膜炎を呈する可能性もあったが、炎症病巣は取り切れている。構成する細胞にはいずれも異型性はなく、腫瘍性病変や特異性炎は認めず、悪性所見はない。

腸壁の固有筋層内に大きな嚢胞状物が形成され、内腔には変性物や好中球、リンパ球などの炎症細胞が貯留し、憩室の周囲組織には顕著な炎症が波及し、肉芽組織が形成されて蛇行した腸管を巻き込んでいる。 pict-DSCF0027.jpg

術後の問題点:  短腸症候群・・・多大な長さの小腸を外科的に切除した結果生ずる病態をいう。

             難治性の下痢、ビタミン、脂肪、および他の栄養素の吸収不良がおこる。この病理学的変化を悪化させる要因には、機能的な回結腸弁の欠損、残存する消化器系の機能不全、及び残存小腸の代償能力がないことなどである。

ある研究では、幼犬では80%の小腸を切除しても適応でき、90%以上の切除により重度の病的状態の結果、有意な死亡率を示す。一方、成犬では小腸の切除が75%までであれば絶えることができると報告されている。

 

写真はアンの術後の下痢便。アンの場合およそ70%の小腸が切除された。

 

1ヶ月後の現在・・・食欲旺盛。元気あり。

            朝の糞便は形があり。昼から夜の糞便は軟便から下痢便。

 

この症例は「病院ものがたり」にも掲載しています。

 「アンへの詫び状1,2」 2009.1.08