症例・・・J・ハムスター メス 1歳4か月 ヒナ
プロフィール・・・9か月齢時と1歳2か月齢時に耳根部にできた
角化組織由来の腫瘤を麻酔下で切除
2か月前から背中の脱毛で定期的に通院治療。
主訴・・・ 一昨日に診察時、腹部鼠径部の10㎜径の円形腫瘤を確認。
昨日、更に大きくなってきたので、外科的切除を決定。
治療・・・腹部皮下腫瘤の外科切除
イソフルレン麻酔で、導入、維持します。右鼠径部に10㎜径の腫瘤が確認できます。
本来なら手術用ドレープを使いたいのですが、呼吸の様子が判りにくくなるので
滅菌消毒を十分した上で、ハムスターのバイタルサインを確認しながら、手術を進めます。
術前には皮下輸液を行い、床ヒーターで温めながら実施します。
皮膚を慎重に切開し、腫瘤を露出したところです。
腫瘤にアプローチすると周囲の栄養血管を電気メスで剥離切断しますが、やはり多少の出血があります。
腫瘤は摘出されました。
この間も麻酔担当スタッフが、呼吸状態を監視しています。実際にはこの手術は3人体制で進めています。
縫合が終了。ヒナは順調に目を覚ましました。
ハムスターは、グルーミングの時に傷を気にして、糸を切ってしまいがちです。
そこで、創面に糸が交わらないマットレス縫合を二重に行っています。
切除した腫瘤の細胞診ではシート形成が見られ、上皮系腫瘍のようです。また,辺在する核をもつ大きな分泌細胞も見られます。乳腺由来の腫瘍かもしれません。
現在、病理組織検査センターに病理診断を依頼中です。
1月20日・・・病理検査報告
病理組織学的診断: 腺管癌(乳癌)
乳管上皮由来の悪性腫瘍性病変(乳癌)が認められました。線維性被膜で被われた多結節状腫瘤が形成され、圧排性の増生を示しています。腫瘤内では、核小体明瞭で大小不同な円形不整形異型核を有する癌細胞は、不規則な大小の腺腔様配列が見られる胞巣を形成して増生しています。周囲間質への浸潤は認められません。
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