症例・・・雑種猫 7歳6か月 メス   名前 セレナ 室内飼育100%

主訴・・・昨夜より急に沈鬱状態 起立困難 食欲元気廃絶  流涎あり

     頭部を左右に振り子のように動かし、時に後弓反張あり

     ❋一昨日までは元気食欲、一般状態に著変なし

     

 

レントゲン検査・・・異常所見なし

血液検査・・・GOT 478 IU/L、 CPK 2000< IU/L

        その他の項目は正常範囲

 診断・・・急性脳神経障害

 セレナのプロフィール

 同居猫が10数頭いる環境の中で育ち、飼育されています。ほとんどの猫がFVR(猫鼻気管炎)感 染歴があり、セレナも結膜炎、慢性鼻炎症状が改善しないまま、飼育されていました。

飼い主が2週間前に、重度のFVR症状の子猫2頭を保護し同居猫に加えましたが、セレナがこの2頭を異常に可愛がっていたとのことでした。

経過

セレナを入院させ、すぐに血管を確保し、静脈点滴を始めました。ビタミン剤、抗生物質を投与。

後弓反張が再び発現したので、フェノバルビタールを投与しました。

しかし状態は悪化しました。 浅速呼吸が続いていましたが、口腔内のよだれが次第に気管に流れるようになり、呼吸ができなくなりました。この時には既に意識はありません。

 

pict-DSCF0131.jpg

 

気管チューブを挿管し、心電計で心音をモニター、必要に応じて点滴ルートから薬剤の投与を実施しました。脳圧を下げるために、ラシックス、グリセオール、メチルプレドニゾロンを使用しましたが、昏睡状態が続きました。

pict-DSCF0135.jpg

深夜1:10までセレナの心臓は打ち続けましたが力尽き、眠ったままの状態で息を引き取りました。

この脳障害が何だったのか原因はつかめませんでしたが、保護したFVR感染子猫と強い接触があったことから、ウイルス性脳炎は考えられます。セレナは一度もワクチン接種をしていませんでした。

残念な結果になりましたが、これも動物病院の出来事の一つです。