症例・・・日本猫  避妊済メス 3歳5か月

主訴・・・元気なく、呼吸が速いので、昨日、他院にて診察、

      肺、心臓に腫瘍があり、手遅れといわれた。セカンドオピニオン希望

レントゲン検査・・・前胸部に腫瘤あり、胸水貯留。

胸水検査・・・芽球を含む多数のリンパ球が見られる

FELV(+) FIV(-)

診断・・・前縦隔型リンパ腫

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この症例は、幾つかの問題点を持っていました。

まず、飼主のSさんお1人で飼育されていて、いろいろな事情から猫に費用をかけれない。

定期的抗ガン治療の継続が必要にもかかわらず、仕事が忙しく毎週来院できないことです。きっちりとしたプロトコールが必要なガン治療には致命的です。

費用はこちらが提示した条件を聞き入れていただき、まずは入院し,ICU管理で状態が安定後、第1回目のCOP治療〈抗ガン治療)を翌日に実施しました。 pict-DSCF0108.jpg

1週間後には元気、食欲も回復し、写真のように縦隔内リンパ腫の縮小と胸水の消失が確認されました。第2回目のオンコビン投与を行い、退院しました。

 

ところが、その後しばらく来院しませんでした。20日後に訪れた時は再び胸水が貯留し、呼吸困難の状態でした。

胸水を左右の胸から抜きましたが腫瘍は、気管、食道までを圧迫し、気管は狭窄されています。

すぐICUケージに収容し酸素を24時間流した状態で翌日にオンコビン投与、3日間管理しましたが、状態は苦しそうです。Sさんに安楽死の選択も提示しました。この状態が続くようならあと1日待って相談しましょうと電話で結論がでました。

 

次の日、顔つきが少し穏やかになっていました。抗ガン剤が再び効果を出し始めたのです。

何とか命は取り止めました。

しかし、この後もリンパ腫との戦いは続いていきます。